Baseball Concrete Blog

主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

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2010年度総合評価 (その8)

これまでで全ての材料が出揃ったのでいよいよ本当に総合評価です。
投手評価・攻撃評価・守備評価の合計が総合評価値となります。各部門の算出方法については同じカテゴリーの過去の記事をご覧下さい。
1位から50位まで全体のランキングを載せますが、今回の算出での1位はセリーグは中日の和田一浩(リプレイスメント・レベルに比べて9.4点の上積み)、パリーグは日本ハムの田中賢介(7.7)となりました。
というわけで当方としてはMVPに両者を推したいところです。
あとはもうあまり説明なしで表を載せます。




セ・リーグTotal Winトップ50
順位球団選手PitchingBattingFieldingPositionalTotal Win
1D和田 一浩0.08.21.7-0.59.4
2D森野 将彦0.06.33.2-0.39.2
3T鳥谷 敬0.05.12.80.48.3
4G阿部 慎之助0.05.90.61.47.9
5S青木 宣親0.06.8-0.30.26.6
6G小笠原 道大0.05.91.0-0.56.5
7T城島 健司0.04.70.21.66.5
8C廣瀬 純0.03.72.8-0.36.2
9S田中 浩康0.02.51.91.15.4
10C前田 健太5.8-0.70.00.05.1
11C梵 英心0.04.30.30.44.9
12G坂本 勇人0.04.30.10.44.8
13Bカスティーヨ0.01.42.40.64.4
14T新井 貴浩0.05.1-0.6-0.34.2
15T平野 恵一0.03.7-0.40.84.1
16Tマートン0.06.0-1.9-0.23.9
17Tブラゼル0.05.3-0.4-1.13.8
18S村中 恭兵4.1-0.60.00.03.4
19G東野 峻3.9-0.50.00.03.4
20G長野 久義0.02.70.8-0.13.3
21S相川 亮二0.01.80.21.33.2
22G内海 哲也3.7-0.50.00.03.2
23Sホワイトセル0.03.00.5-0.43.1
24S石川 雅規3.5-0.50.00.03.1
25S由規3.8-0.80.00.03.0
26C赤松 真人0.00.92.10.03.0
27T桜井 広大0.01.12.0-0.22.9
28S館山 昌平3.4-0.50.00.02.9
29D浅尾 拓也2.80.00.00.02.8
30T久保 康友3.6-0.90.00.02.7
31G久保 裕也2.70.00.00.02.6
32Dチェン3.2-0.60.00.02.6
33Dブランコ0.04.2-0.7-1.02.5
34B加賀 繁3.1-0.70.00.02.4
35D谷繁 元信0.01.10.21.02.4
36Tスタンリッジ2.9-0.60.00.02.3
37B山口 俊2.30.00.00.02.3
38C嶋 重宣0.01.60.9-0.32.2
39G山口 鉄也2.3-0.10.00.02.2
40Gラミレス0.05.7-2.8-0.82.2
41D中田 賢一2.5-0.40.00.02.1
42S飯原 誉士0.02.40.1-0.42.1
43D荒木 雅博0.02.3-0.60.42.1
44C石原 慶幸0.00.80.01.22.1
45C栗原 健太0.03.3-0.7-0.62.0
46Gゴンザレス2.6-0.60.00.02.0
47Sデントナ0.01.41.1-0.52.0
48S松岡 健一1.90.00.00.01.9
49D吉見 一起2.8-0.90.00.01.9
50G藤井 秀悟1.9-0.10.00.01.8



パ・リーグTotal Winトップ50
順位球団選手PitchingBattingFieldingPositionalTotal Win
1F田中 賢介0.04.62.01.17.7
2Fダルビッシュ 有7.50.00.00.07.5
3F糸井 嘉男0.05.01.90.27.1
4M西岡 剛0.06.20.40.47.0
5L片岡 易之0.03.51.71.06.2
6BsT-岡田0.04.52.1-0.66.0
7Bs金子 千尋5.4-0.10.00.05.3
8E岩隈 久志5.1-0.10.00.05.0
9H本多 雄一0.02.31.61.14.9
10H杉内 俊哉5.0-0.10.00.04.9
11H多村 仁志0.05.1-0.3-0.34.4
12M今江 敏晃0.03.60.9-0.34.2
13M井口 資仁0.05.6-2.51.04.1
14H和田 毅4.10.00.00.04.0
15E田中 将大3.9-0.10.00.03.7
16F武田 勝3.8-0.10.00.03.7
17Bsカブレラ0.05.2-0.5-1.03.6
18E鉄平0.03.90.0-0.33.6
19M金 泰均0.03.21.4-1.03.6
20Bs木佐貫 洋3.40.00.00.03.4
21M成瀬 善久3.3-0.10.00.03.3
22Bs岸田 護3.20.00.00.03.2
23E嶋 基宏0.02.0-0.11.33.2
24L栗山 巧0.03.8-0.90.23.2
25L中島 裕之0.04.6-1.80.33.1
26L涌井 秀章3.00.10.00.03.1
27Hファルケンボーグ3.10.00.00.03.1
28E聖澤 諒0.01.81.10.23.1
29L岸 孝之3.0-0.10.00.02.9
30Bs平野 佳寿2.90.00.00.02.9
31Bs坂口 智隆0.03.3-0.60.22.8
32L帆足 和幸2.9-0.10.00.02.8
33H攝津 正2.60.00.00.02.6
34H川崎 宗則0.03.4-1.30.42.5
35M里崎 智也0.01.8-0.20.82.4
36F金子 誠0.00.22.00.22.4
37Bs近藤 一樹2.30.00.00.02.3
38F小谷野 栄一0.03.4-0.9-0.32.3
39F榊原 諒2.10.00.00.02.1
40Eラズナー2.2-0.10.00.02.1
41E青山 浩二2.00.00.00.02.0
42E高須 洋介0.00.80.50.72.0
43Bs北川 博敏0.02.40.5-1.02.0
44H馬原 孝浩2.00.00.00.02.0
45Fケッペル2.00.00.00.01.9
46H甲藤 啓介1.90.00.00.01.9
47Bs後藤 光尊0.02.7-1.81.01.9
48L石井 一久2.0-0.10.00.01.9
49H長谷川 勇也0.01.00.80.11.9
50Mマーフィー2.0-0.10.00.01.9



なんとなくパ・リーグのほうが優秀者に投手が多く野手の数字が良くないような感じがしますが、これは別に投手が優秀なため野手が良い数字を残しにくいとかいうわけではありません。
リーグの平均に比べて傑出していれば全体の打撃成績に関わらず良い数字は出せますし、上位ランクに投手が多いのはDH制に伴う起用法の差に起因するのではないかと思います。



セ・リーグチーム別
TeamPitchingBattingFieldingPositionalTotal Win
T20.532.00.70.453.6
G24.926.6-0.60.551.4
D22.217.42.00.842.3
S24.119.3-2.20.842.1
C14.815.23.60.834.3
B19.56.5-2.50.824.3


パ・リーグチーム別
TeamPitchingBattingFieldingPositionalTotal Win
F22.016.46.6-0.344.7
Bs25.019.8-1.8-0.342.8
H25.318.5-1.0-0.642.2
L18.922.70.8-0.741.7
M16.125.2-3.9-0.137.4
E20.513.3-0.7-0.532.5




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2010年度総合評価 (その7)

総合評価のうち守備の評価です。計算の手順は以下。

 (A) 各守備位置での得点を求め合計する。
 (B) Aを勝利数に変換する。
 (C) 守備位置補正得点を計算する。
 (D) Cを勝利数に変換する。
 (E) B・Dを合計する。

守備の評価パートでは、まず各守備位置内での守備の得失点を計算します。
内野手であれば推計ゴロ数に対する補殺のレート、外野手であれば推計フライ数に対する刺殺・補殺のレート、捕手であればイニングあたりの盗塁阻止・捕逸・失策を得点化して評価します。詳しい算出法はサイトにて(捕手守備評価内野手守備評価外野手守備評価)。
ちなみに総合評価はリプレイスメント・レベルに比べての利得ですが平均的に言うと守備のリプレイスメント・レベルは平均水準に等しいので守備の評価においてはリプレイスメント・レベルを勘定に入れるための別段の計算は不要です。言い換えると、選手を直接リプレイスメント・レベルと比較しているわけではなくて平均的な選手との差を出してそこに平均的な選手とリプレイスメント・レベルの選手との差を加算しているわけです。
各守備位置での得点を合計し、守備者として全体で貢献した点数(A)を計算します。

 A=捕手での守備得点+一塁での守備得点+……+右翼での守備得点

これを、リーグ平均得点(Rとする)とピタゴラス勝率式を利用して勝利数(B)に変換します。

 B=144×(R^1.7/(R^1.7+(R-A)^1.7)-0.5)

防いだ失点(守備得点)が多いほどチームの勝率は上がり、それが基準を上回る分を評価します。
これが守備位置の価値を考慮せずに守備で貢献した数字です。

守備位置の価値(C)は、前回紹介した数値を用いて単純に各守備位置を守ったイニング数から以下のように計算します。

 C=(16×イニング(捕手)-12×イニング(一塁手)+11×イニング(二塁手)-3×イニング(三塁手)+4×イニング(遊撃手)-6×イニング(左翼手)+2×イニング(中堅手)-4×右翼手-17×イニング(DH))/1280

そして、守備得点と全く同じようにして勝利数(D)に変換します

 D=144×(R^1.7/(R^1.7+(R-C)^1.7)-0.5)

守備位置の価値も含めた守備全体の貢献値(E)は、単純に(B)と(D)の加算で求められます。

 E=B+D

ここではFanGraphsのWAR発表形式に倣い、対象守備位置内での利得(B)をFielding、守備位置補正値(D)をPositionalと呼ぶことにします。
今回はその合計値をとって(Defense Total)リーグ別のランキングを示しておきます。
これでもう総合評価として全体のレーティングが算出可能になるという大変胸躍る展開ではあるのですが、おそらく総合評価の中でこの守備評価の部分が最も問題が多いことは一応指摘しておかなければならないでしょう。UZRあるいはプラスマイナスシステムなしに守備を評価することは非常にノイズが多く、選手ごとの差も必要以上に大きく出る傾向にあります。
推測ですが、総合評価のランキングを見たときに「え、この選手がこんなに高いの?」といった意外な結果は、多くが守備評価のノイズに起因することになるでしょう(もちろん見た側にとって意外でも真実の側からするとそれで正しいという場合もあるはずですが)。
したがって、ノイズをできるだけ除去して選手の価値を考えたい場合には守備の数字をかなりの程度平均へ回帰させるなどの処理を行なうことが無難ではあります。ここでそれを行なわないのは、真の能力を推定したいわけではないという目的の違いです。




セ・リーグ Defense Totalトップ30
順位球団選手FieldingPositionalDefense Total
1 T鳥谷 敬2.8 0.4 3.2
2 Bカスティーヨ2.4 0.6 3.0
3 S田中 浩康1.9 1.1 2.9
4 D森野 将彦3.2 -0.3 2.9
5 C廣瀬 純2.8 -0.3 2.5
6 G亀井 義行2.6 -0.2 2.4
7 C赤松 真人2.1 0.0 2.1
8 G阿部 慎之助0.6 1.4 2.0
9 T桜井 広大2.0 -0.2 1.8
10 T城島 健司0.2 1.6 1.8
11 S相川 亮二0.2 1.3 1.4
12 B藤田 一也1.2 0.2 1.4
13 D谷繁 元信0.2 1.0 1.2
14 D和田 一浩1.7 -0.5 1.2
15 C石原 慶幸0.0 1.2 1.2
16 D堂上 直倫0.4 0.5 1.0
17 T浅井 良0.8 0.0 0.8
18 D岩崎 達郎0.7 0.2 0.8
19 D野本 圭0.9 -0.1 0.7
20 T狩野 恵輔0.8 0.0 0.7
21 S福地 寿樹0.9 -0.2 0.7
22 G古城 茂幸0.5 0.2 0.7
23 C梵 英心0.3 0.4 0.7
24 B武山 真吾-0.2 0.9 0.7
25 B金城 龍彦0.6 0.0 0.7
26 C石井 琢朗0.7 -0.1 0.6
27 G長野 久義0.8 -0.1 0.6
28 Sデントナ1.1 -0.5 0.6
29 C嶋 重宣0.9 -0.3 0.6
30 G小笠原 道大1.0 -0.5 0.6


パ・リーグ Defense Totalトップ30
順位球団選手FieldingPositionalDefense Total
1 F田中 賢介2.0 1.1 3.1
2 L片岡 易之1.7 1.0 2.7
3 H本多 雄一1.6 1.1 2.6
4 F金子 誠2.0 0.2 2.2
5 F糸井 嘉男1.9 0.2 2.0
6 F飯山 裕志1.9 0.1 2.0
7 L細川 亨0.5 1.0 1.5
8 BsT-岡田2.1 -0.6 1.5
9 F鶴岡 慎也0.4 0.9 1.3
10 E聖澤 諒1.1 0.2 1.2
11 E高須 洋介0.5 0.7 1.2
12 E嶋 基宏-0.1 1.3 1.1
13 H山崎 勝己0.3 0.7 1.0
14 F大野 奨太0.3 0.7 1.0
15 Bsカラバイヨ1.0 -0.1 1.0
16 L佐藤 友亮1.1 -0.2 1.0
17 L浅村 栄斗0.9 0.0 0.9
18 H長谷川 勇也0.8 0.1 0.9
19 E内村 賢介0.6 0.3 0.9
20 F紺田 敏正0.9 0.0 0.8
21 M西岡 剛0.4 0.4 0.8
22 L坂田 遼0.8 -0.1 0.7
23 Bs日高 剛0.0 0.6 0.6
24 M里崎 智也-0.2 0.8 0.6
25 M今江 敏晃0.9 -0.3 0.6
26 H柴原 洋0.7 -0.1 0.6
27 Bs荒金 久雄0.7 -0.1 0.5
28 H江川 智晃0.6 0.0 0.5
29 L上本 達之0.0 0.5 0.4
30 Bs一輝0.4 0.0 0.4




2010年度総合評価 (その6)

守備編です。
守備をいかに評価するか、ということに関しては一応以前から取り組んでいる問題であり、基本的に守備位置ごとの評価は打球を処理する頻度の高さを守備位置の平均と対比させて評価をするということになります。また、捕手についても盗塁阻止などをベースにある程度評価はすることは可能です(捕手守備評価内野手守備評価外野手守備評価)。
問題は守備位置補正です。以下の議論はやや入り組んでいてわかりにくいかもしれませんがご了承ください。

守備位置補正をどう扱うか

守備位置補正の考え方についてざっくりみていきましょう。
遊撃手での+5と三塁手での+5は等価値に扱えません。おそらく、遊撃手で+5のレーティングを出す選手は三塁手として守った場合には+5を超える評価となるでしょう(必ずしもそうかはわかりませんが一般的には)。
したがって守備位置横断的に全体の評価を行なうには、この格差を定量的に表し補正をしてやる必要があります。
これに関して米国のWARで採用されている手法としては複数の守備位置を守った選手の守備評価から守備位置ごとの難易度を出し、各守備位置の価値を算出するものがあります。
たとえば遊撃手と三塁手の両方を守った選手のグループを見たときに、彼らが遊撃手として-2、三塁手として+3の評価であった場合、遊撃手の平均は三塁手の平均に比べて5点分難易度が高いものとして評価されます。このようにして全ての守備位置を比較していき、各守備位置の相対的な価値がわかれば、補正が行なえます。
遊撃手の補正値が+5であれば、平均的な野手(平均的な遊撃手、ではなく)が遊撃を守った場合には-5と仮想的にみなせるため、仮に遊撃手として0の評価でも野手全体と比較した場合には+5であると評価されます。
この手法は、守備位置間の評価の補正としてある程度適切なものだと私としても思います。

しかし、今回の総合評価では上記の補正の手法は採用しないことにします。理由は、NPBに関して実際に補正値を算出することが困難だからです。
困難とは何を指すかというと具体的には以下の2点があげられます。

・信頼のおける守備指標およびサンプルサイズが確保されない
MLBでは信頼のおかれる守備指標UZRのサンプルが多く確保できますが、日本ではこれを書いている時点の2011年前半で、やっと専門機関によるUZRが出始めたものの各選手についての詳細な数字は出ていないのに加えサンプルサイズが足りません。
代用的な守備指標を用いて計算をすることも可能でありある程度は意味を成すと思いますが、私の手元にあるデータは2005年から2010年までの6年分のデータに過ぎず、MLBに比べて球団数が少ないことも考え合わせるとサンプルサイズが少なくめちゃくちゃな結果が出てしまいかねません。複数の守備位置を守った選手という特殊な例に対象をしぼるためそもそも数が確保しにくいのです。

・算出法自体に技術的な困難性が多く恣意性を排除できない
サンプルが確保できたとしても、それをいかに計算し最終的な結果を出すかは難しい問題です。
そもそも複数の守備位置を守るという時点でそのサンプルは特殊な場合である可能性が高く、その時点でサンプルは守備位置ごとの難易度の違いそのものをうまく代表するものではないという懸念があります。外野手が故障を抱えたため一塁手で起用された場合など、守備位置そのものの影響以外でパフォーマンスが悪化することが考えられます。
そうなれば事情を上手く考慮して補正する必要があるのですが、どのようにその過程を行なうかについては客観的で明確な筋道を定めることが難しく、恣意性が介入することになります。

また、これは守備指標による補正を否定する理由ではなく別の話ですが、私は総合評価の守備位置補正として守備指標の補正だけをするのは若干片手落ちで理想的には打撃についても補正が必要だと考えております。
仮に守備位置を変えて守備指標の評価が変わらないとしても打撃指標は変化する可能性があり、それが傾向として出ているなら補正すべきだろうと思うからです。
理由はともかくとして、「平均的な野手」の打撃指標が仮に捕手を守った場合に低下するとしたら(たとえばOPS.730から.700に)、捕手でOPS.730を打つことは平均的な野手に比べてのアドバンテージをチームに与えていると評価できます。守備指標の変化に関わらずです。ですから私は守備位置補正には(理想的には)守備評価の補正に加えて攻撃評価の補正が必要だと考えます。

そして今回の総合評価でどういう補正をするのかというと、打撃指標を使った補正値という比較的伝統的な手法を用いたいと思います。
これは、たとえば一塁手の平均的なBatting Runsが+10であれば、一塁手の総合評価を10ポイント割り引くというものです。
この手法は守備の関係と直接的につながるものではないという大きな問題を抱えています。二塁手の打撃指標が-10だとしても、それは二塁手という守備位置の難易度に起因するのではなく、ただ単に二塁手を守っている選手が全体として打撃の能力に乏しいだけかもしれないからです。条件が異なるわけでなく単純に能力が低いだけの選手の評価を補正して持ち上げるなどというのはおかしな話です。
しかし守備位置を基準として打撃指標を分けた場合に評価に違いが出るというのは守備位置に起因する何らかの理由があると「推測」することも可能で、それを含めて打撃指標の数字を守備位置補正に用いることのメリットは以下のように挙げることができます。

・算出が容易である
打撃指標は(LWTSであれRCであれ)算出法が比較的固まっていて、あまり議論の余地がないため明確に計算できます。
また、サンプルサイズも守備指標に比べれば十分多く確保できます。
おそらく誰が計算しても結果はほとんど同じになるため、その意味では客観性があると言えます。

・守備の負担を何らかの形では反映しているだろうと推測される
もし守備位置ごとの難易度に全く違いがないのであれば、野球においてどの守備位置でも同じような打撃の結果となるのが自然でしょう。
しかし現実にはそうではありません。これは背理的に守備位置ごとの難易度の違いを示唆します(ただし、繰り返しですが打撃指標でそれを直接的に表せるわけでくそれが最大の問題です)。

・守備位置の打撃補正を含める可能性がある
打撃指標を使って補正値を求めることから、前述した議論の守備位置の打撃補正を含めることができる可能性があります。
ただし同じ選手同士を比較していくわけではないため「傾向としてその一部に含むだろう」程度の意味です。

・悪くても守備位置内傑出度として使える
守備指標は元々対象の守備位置における相対的な利得を表します。
そして打撃指標で補正を行なうと、総合評価は結果的に「守備位置平均に対する打撃の利得+守備位置平均に対する守備の利得」で対象の守備位置内での傑出度を表すものとなります。
野球は原則として全てのチームが同じように守備位置を割り振って試合を行なうことから守備位置内での傑出度チームに与える利得の考え方として重要であり、それは野手全体の貢献そのものを一次元的に、横断的に評価するものではなくてもまた別のものとして有用な評価となり得ます。各選手の守備位置内での傑出度を全体で比較することも、それ自体には問題はありません。左翼手として+10の選手と遊撃手として+5の選手は能力は後者のほうが上かもしれませんが、守備位置内での利得は前者が上である(と評価されている)こと自体は間違いないわけですから。

結果の数字は以前サイトで行なった守備位置別打撃成績の研究から、600打席(あるいは1280イニング)あたりでこうなります。

 捕手 +16
 一塁手 -12
 二塁手 +11
 三塁手 -3
 遊撃手 +4
 左翼手 -6
 中堅手 +2
 右翼手 -4
 DH -17

捕手でフル出場した選手であれば守備位置補正を除く総合評価値に16が加点されることになり、一塁手と三塁手が半々で出場した選手の場合には-12と-3の中間で-7.5の補正値となります。遊撃手でシーズンの半分程度出場した場合の補正値は+2です。

最後に、計算に必要な守備イニング数のデータは、2010年度分ついてはSMR Baseball Labで得られるためそれを参照します。
ただしDHのデータは得られないため、打席数に対して見込まれる一般的な守備イニング数と実際に守った守備イニング数を比較して後者が顕著に少ない場合には差分をDHでの出場イニングとみなすという手法をとります。つまり守らなかった守備イニング数を数えます。
平均的には1打席の出場に対して2.13の守備イニングが見込まれます。実際には打順の関係などでブレがありますので見込み守備イニングに比べて実際の守備イニングが200以上少ない場合のみDH出場として考慮することにします。


次回は具体的な計算を行いデータを掲載します。



2010年度総合評価 (番外編)

総合評価の話に関しては投球・打撃と評価が終わり守備に入るのですが、ちょっと番外編を。


投手の守備について

投手の評価をFIPという指標を使って行いましたが、あれは正確に言えば「投球」の評価です。
つまり、投手という一人の選手という単位で考えたときに、守備と打撃という側面は切り落とされているわけです。
このうち打撃については他の野手と同じように評価することに原則的には問題はありません。
少し議論になり得るのは投手の守備の評価です。

FIPで評価されるアウトは奪三振だけです(分母である投球回のことも考えると少し事情は違うのですがとりあえず無視して考えます)。
しかし、打球となった結果投手が自分で処理してアウトを成立させたのであれば、それは投球で奪ったアウトではないかもしれないけれど投手自身の手柄によるアウトだと考えることは貢献の観点から見れば可能です。そして同時に妥当だと思います。
ではこの投手の守備をいかに評価すべきなのでしょうか。

通常の野手であれば、守っている間に飛んできた打球のうちどれだけをアウトにしたかという方向で評価を行います。
投手の場合投球成績から自分がマウンドにいる間のBIP(Balls In Play)が算出可能ですから、それと奪ったアウトである補殺の比をとれば打球をどれだけ処理しているかの数値自体は算出できます。
しかし、野手の場合投手の要素はさまざまに分散され打球分布の偏りがなくなることを想定しているのに対し、投手の守備を計算する場合には投手自身の投球による打球分布の偏りがモロに出てしまうと思われます。すなわちBIPに対するアウト付与数が多くてもそれは守備の上手さの指標にはなりづらいということです。
であれば、他の野手と同じように守備に就いた機会あたりのアウトのレートを評価することに大した意味はありません。
むしろ「結局自分で成立させたアウトがある」という事実を単純に勘定に組み込むという方法はどうでしょうか。

そこで考えたのが、FIPに投手自身の補殺を組み込んでしまうという方法です。
投手が自分で成立させたものであること、プレーとしてアウトであることから、FIP上の位置と得点加重は奪三振とほぼ同等であるものとみなせば以下の式が考えられます。

 改造FIP=(13×被本塁打+3×与四球-2×(奪三振+補殺))/投球回

投球成績の中に急に守備の項目が登場するため違和感バリバリの式です。しかしこれで(強引ながら)一応投手自身の守備を含めた、他の守備者からは独立した評価が計算されます。
Pitcher's fielding Included FIP、piFIPといったところでしょうか。
この式を使って投手の貢献値(total win)を計算し直したところ、通常のFIPを用いる場合との差は最大値で0.5でした。得点では5点相当でこれ自体はバカにはならないですが両リーグで327の投手がいるうち最大でもこの程度の違いしかないのですから、この方式では基本的には単純にFIPを計算する場合と比べてほとんど違いはないと言えます。

投手については一度算出してしまいましたしこの方法は思い付きの面も強いので今回はこの点については深入りしませんが、いずれにせよ今後は何らかの方法で投手の守備も組み込まなければと思っています。



2010年度総合評価 (その5)

今回は打者の評価です。
打者の評価はLWTSで非常に簡単に行なえるものであり、工夫として加わるのはPF補正とRun-Winコンバートくらいです。

算出は以下の手順で行います。

 (A) LWTSにより、打席あたりにどれだけ得点期待値への貢献があるかを計算する。
 (B) 平均的なチームに対象の打者が加わった場合の総得点を計算する。
 (C) Bを勝率に変換する。
 (D) 同じ打席数をリプレイスメント・レベルに任せた場合の総得点を計算する。
 (E) Dを勝率に変換する。
 (F) C、E両者の勝率を比較し、貢献した勝利数を導き出す。

打者の仕事はチームの得点数を増やすことであり、それは打者が発生させた各事象が得点期待値にどのような影響を与えるものであるかにより計算することができます。
ここでは日本版LWTSの数字をもとに、アウトをゼロとして補正した打席あたりの数字(サイトなどでRVAと呼んで使用してきたもの)を求めます。故意四球、犠打等はチームの戦術などが絡むため今回は解析の対象から除外することとします。

 RVA=(0.56×(四球-故意四球+死球)+0.71×安打+0.33×二塁打+0.69×三塁打+0.96×本塁打+0.17×盗塁-0.31×盗塁刺)/(打数+四球-故意四球+死球+犠飛)
 A=RVA+(1-PF)×リーグの打席あたり得点

PFは得点PFの跳ね返り倍率で、本来的にはアウトを単位とする数値であるため打席数に掛けて計算するのは正確ではないものの近似としては問題はないと判断しています。
ここからリーグの平均RVAを引き打席数をかけると、平均的なチームに加わった場合どれだけ得点を増やすかが計算できます。ここにリーグの平均チーム得点(長ったらしいのでRとおく)を足したものが、対象の選手が加わったチームの総得点(B)となります。

 B=R+打席×(A-リーグ平均RVA)

この場合のチームの勝率(C)は

 C=B^1.7/(B^1.7+R^1.7)

です。
リプレイスメント・レベルの打者はRVAではリーグ平均の0.86倍程度のパフォーマンスであることが過去の統計からわかっていますので、対象の打者と同じ打席数の分だけリプレイスメント・レベルの打者に出場させた場合のチーム総得点(D)は以下のように計算されます。

 D=R+(0.86-1)×リーグ平均RVA×打席

この得点数でのチームの勝率(E)は

 E=D^1.7/(D^1.7+R^1.7)

となります。
最終的に、対象の打者がチームにいる場合の勝率(C)と、リプレイスメント・レベルに出場させた場合の勝率(E)を比較し、その打者が出場することによってシーズン全体でどれだけの勝利数が上積みされたか(打者の最終評価であるBatting)が求まります。

 Total Win(Batting)=(C-E)×年間試合数

年間試合数は、2010年であれば144試合です。
ちなみにこの評価式のショートカットは「(RVA-0.86×lgRVA)×打席/10」です。



2010年のリーグ別上位者30人を示します。

セ・リーグ
順位球団選手打席RVABatting
1D和田 一浩602 .3698.2
2S青木 宣親667 .3326.8
3D森野 将彦626 .3306.3
4Tマートン668 .3186.0
5G小笠原 道大591 .3295.9
6G阿部 慎之助569 .3335.9
7Gラミレス606 .3235.7
8Tブラゼル601 .3155.3
9T鳥谷 敬651 .3065.1
10T新井 貴浩641 .3075.1
11T城島 健司602 .3054.7
12C梵 英心659 .2954.3
13G坂本 勇人676 .2914.3
14Dブランコ561 .3024.2
15T平野 恵一593 .2973.7
16C廣瀬 純546 .2963.7
17B内川 聖一637 .2783.3
18C栗原 健太450 .3003.3
19Bスレッジ533 .2843.1
20Sホワイトセル268 .3403.0
21G長野 久義459 .2862.7
22Bハーパー261 .3322.7
23S畠山 和洋280 .3202.6
24S田中 浩康637 .2682.5
25S飯原 誉士492 .2752.4
26D荒木 雅博625 .2632.3
27B村田 修一617 .2592.0
28G高橋 由伸332 .2841.9
29S相川 亮二474 .2641.8
30G脇谷 亮太459 .2651.8



パ・リーグ
順位球団選手打席RVABatting
1M西岡 剛692 .3236.2
2M井口 資仁650 .3185.6
3Bsカブレラ481 .3435.2
4H多村 仁志559 .3245.1
5F糸井 嘉男583 .3215.0
6L中島 裕之579 .3114.6
7F田中 賢介662 .3014.6
8BsT-岡田520 .3184.5
9E鉄平555 .3013.9
10L栗山 巧660 .2893.8
11M今江 敏晃596 .2943.6
12F稲葉 篤紀591 .2893.5
13L片岡 易之643 .2843.5
14F小谷野 栄一614 .2863.4
15H川崎 宗則662 .2813.4
16Bs坂口 智隆622 .2823.3
17M金 泰均614 .2813.2
18Hオーティズ457 .2892.7
19Bs後藤 光尊632 .2712.7
20Mサブロー513 .2782.5
21Bsバルディリス434 .2862.4
22Bs北川 博敏403 .2902.4
23L中村 剛也354 .2962.3
24H本多 雄一651 .2662.3
25M福浦 和也359 .2922.2
26H小久保 裕紀469 .2752.2
27M大松 尚逸603 .2642.2
28Lフェルナンデス243 .3202.1
29L高山 久423 .2782.0
30E嶋 基宏485 .2722.0




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