Baseball Concrete Blog

主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

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【告知】『セイバーメトリクス・リポート3』

発売は月末でもう少し先ですが、セイバーメトリクスのアニュアル本である『セイバーメトリクス・リポート』が、今年も出ます。第三弾。

セイバーメトリクス・リポート3 (Amazon.co.jp)

今回も色々データが載っていたり、分析家によるコラムがあったりという内容です。昨年の秋に発売された『セイバーメトリクス・マガジン2』で既に2013年のWARが発表されていますが、そのアップデートバージョンも収録されています(本ブログで行ったような議論を反映)。

私は個人ネタとしては今回、「投手の成績を予測する簡単な方法」という記事を書きました。内容的には「カジュアルな数字遊び」と「分析的にちゃんと意味のあるデータ活用」のちょうど合間のような、簡単だけど使える指標の紹介をしています。

例えばWHIPは、計算が簡単かつ直観的で誰でもすぐに理解できる指標です。しかし残念ながら、何かを分析する際にWHIPが役に立つことは全然ないという点が散々指摘されており、わかりやすくて計算しやすかったところで意味ないよね、という話になってしまいます。

他方、成績予測などは(細かい精度の問題はともかく)情報としては誰もが求めるような性格のものですが、当方が行っているような比較的簡単な算出でさえ、おそらくやろうとする人は非常に少ないでしょう。端的に言って、面倒臭いです。

簡単に計算できるWHIPは役に立たない。役に立つ情報を求めると煩雑になる。しかし、WHIPのような簡単さで、成績予測みたいな性格の有用な情報が得られる指標があるとしたら……? と、そんな話がテーマになります。ゴリゴリの難しい感じではなく、軽く読んでいただけると思います。



ところで、当方が関わっているガチセイバーメトリクス系出版物も『セイバーメトリクス・リポート』が本作で3つめ、『セイバーメトリクス・マガジン』が既に2つと、数が多くなってきました。これまではスルーしてきたけど今からどれか買ってみようかとお考えの方も、中にはいらっしゃるかと思います。

基本的に、アメリカで出ているTHTとかのアニュアルもそうなのですが、別に1から順番に読まないといけないというものではありませんので今年の3ではじめて読むというのでも大丈夫です。

もちろんある程度、過去の研究を踏まえた発展などの流れはありますので、1から全て読んでいるほうが話がよくわかるということ自体は間違いありません。また、セイバーメトリクス系の日本語書籍の中ではおそらくもっともコアなシリーズなので、セイバーメトリクスについて全く何も知らない、というところから入ると戸惑う部分はあろうかと思います。

このあたり、もし予備知識を強化したいということでしたら例えば拙サイト道作さんのサイト、あるいは無料公開されたセイバーメトリクスの歴史をさらったコラムなんかを見ていただければ、特段別の書籍などを購入せずとも内容に馴染むための基本的なところは把握していただけるかと思います。

また、今回の『リポート3』には「リポートの理解を助けるセイバーメトリクスの基礎解説テキスト」があったり、例年通り用語解説があったりしますので、興味さえあればそれほど構える必要はないかと思います。


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SMM2をもっと楽しむために

先日発売しました『セイバーメトリクス・マガジン2』についてもう少し書きます。

特集の守備企画なんですが、やはり少し難しいのでというお話が編集の秋山さんからあり、ちょっとした解説として岡田さんと私の対談みたいなものが収録されています。

が、まとまりなく好き勝手なことを喋ってしまい(編集に負担をかけたうえ)あまり読み進める上でのガイドになるような内容を残せなかったなぁと反省しております。

そこでこのブログの場を使って、守備企画を読んでいくうえでのガイドあるいは補足あるいは勝手な感想みたいなものを少し書いてみようかと思い立ちました。

多分また大した内容にならないと思いますが、ネタバレをしない程度に自分として感じたポイントなどをつらつらと書きつつリンクなどを貼って周辺の話題を紹介していこうかなと。著者の方が伝えたい大事な内容はもちろん本に書かれているわけですが、こういうところもおさえておくとさらに今回の企画を楽しめるかも、ということで。

※長くなってしまったので適当に拾い読みして下さい。




【UZRに親しむ】

今回の守備企画の基礎には、なんといってもUZRがあります。UZRがわからないと、話全体がわからないことになってしまいます。

セイバーメトリクスの指標って大概は別に数学的に高度なものでもないし、発想のポイントさえ掴めればすぐに理解できるのですが、このUZRに関しては「ちょっと難しい」と思っておいたほうがいいかもしれません。

もちろん高度な専門知識がなければ理解できないとかそんなレベルの話ではないので恐れる必要は全くないのですが、「なんとなく」わかったつもりで流すのではなくて、時間としては30分もいらないのでどこかで一回腰を据えて説明を読みロジックを追うことお勧めしたいのです。

UZRは守備の得失点をうまく表現するために工夫して作られていることが見て取れる内容になっていて、「なんとなく」の理解だとその工夫を見逃してしまいがちかと思います。なので一度きちんと取り組む心構えを持ったほうがいいと思うわけです。例えば緩いゴロが三遊間を抜けたとき、三塁手と遊撃手はそれぞれどう評価されるのか。それが強いゴロだったらどうなるのか。遊撃手が捕球してアウトにしたら三塁手はどう評価されるのか。ただ単に「獲得アウト/ボールインプレー」で評価する場合とどう違うのか。こういったことを説明できることが重要です。

日本語の資料は少ないですがウィキペディアのUZR項目で計算の骨格は掴めると思います。開発者MGLの説明文を三宅さんが翻訳してくれているものもありますのでそちらもお勧めです。

ウィキペディア:UZR

MGLのコラム(三宅さんによる翻訳)


英語の資料ではFanGraphsに掲載されているMGL自身による記事が、仕組みや活用にあたってのポイントなどを網羅していて非常に有益です。

UZR Primer




【守備企画全般について】

UZRはここが本邦初登場というわけではないので今更な部分もありますが

(1)選手の守備力を定量的な基準で比較することができる
(2)守備の得点(失点)の意味での具体的なインパクトがわかり、攻撃や投手のそれと比較することができる
(3)守備全体に点数を割り当てるだけでなく、その中身までわかる

といった点について、改めてすごいなぁと今回のSMM2を読んでいて思いました。なにしろ、(特に日本では)ちょっと前までは「優れた守備者はシーズンで失点をどのくらい防いでいるのか? 100点? 10点? 50点?」みたいな状況だったわけですから。

個人的に5年くらい前は、日本でゾーンレーティングの計測が行われるのなんて20年は先の話だろうと思っていました。現に出ているものを見た後からすると当たり前のようでも、やはりけっこう驚くべきことです。ただ守備の良い悪いを言うだけじゃなくて、これを材料に野球の様々な部分を考えていくことができるはずです。

話が逸れてますね。以下では、分析者の方ごとに分けて、自分が気になったポイント(というか素朴な感想?)をごく簡単に書いてみたいと思います。読む上でのガイドといえば偉そうですが(ネタバレしない範囲で)例えばこういうところが面白いですよね、という話として。



【Student氏参考分析(三塁手)】

いつも仕事の丁寧なStudentさんらしいところですが、データの中身をわかりやすく図と表に出してくれているので、守備について詳細なところがわかるようになっています。ゾーンデータの恩恵がわかりやすく感じられます。

例えばStudentさんの分析を一旦別として、素朴にデータを眺めて何が言えるかを自分なりに考えてみるのも楽しいです。



【morithy氏参考分析(遊撃手・左翼手)】

遊撃手について言えば、ゴロ打球だけでなくエア打球(フライ・ライナー)を分析に含めている点が特徴的です。通常内野手のUZRはゴロだけが対象なので。この点、開発者のMGLはエア打球を含めるのは絶対にダメだと言っているのではなく、含めるほうがいいかもしれないという議論もあります。色々考えてみるのも一興です。

またゴロの分析では三遊間・正面・二遊間という3分割を採用しており、これはフィールディング・バイブルなんかでも見られますがイメージしやすくていいな、と思いました。単純なことですが分析の結果を説明するうえで「この選手は方向EとFの打球に強い」とか言うより「三遊間に強い」と言うほうが圧倒的にわかりやすいですからね。

余談ですがmorithyさんはUZRのデータが得られる以前から守備の分析について野心的な試みを多く行われてきた方です。morithyさんの個人サイトに行くとレンジファクターを改良した系統の評価を往年の選手について見ることができ、小坂の守備がどれだけ凄かったかなんてことがわかったりして非常に楽しいです。未読の方はこの機会にぜひ。

日本プロ野球計量分析レポート&データ集



【岡田氏参考分析(中堅手・右翼手)】

守備範囲が一目でわかるように可視化している点やアームレーティングの内訳が見られる点が「オイシイ」ところですね。

例えば中堅手のアームレーティングの内容を見ていくと、発生する頻度や直接ホームインになるプレーである関係からであると思われますが、二塁走者を単打で生還させるかどうかの部分で選手ごとの差が大きいことがわかります。単に選手ごとの点数が出るというだけでなく、勝敗に影響が大きいプレーは何かというのが定量的にわかるのは野球の知見として重要かと思います。

走者が外野手の肩を警戒して進塁を留まるのは外野手の「貫禄」のような漠然としたものとして扱われてきた感がありますが、冷静に考えれば塁の状況としてリアルに観察できる事実です。そういうことをきちんと観測したら、どのくらい勝敗に影響があるのか? 誰が優れているのか? この辺がわかるようになった意義は大きいなぁと改めて感じました。



【道作氏参考分析(捕手)】

UZRによる原則評価では済まない捕手ですが、結論としては現状出来る範囲で無理のない評価をなさっているという印象です。式は書かれていませんが評価法を文字通りに読めば例えば当方がサイトに出している手法にかなり近いのではないかと思います。

これはかなり個人的な感想なのですが、自分の中に「みんな色々言ってきたけど、結局捕手の評価をどうにかできたんだっけ?」という疑問がありまして、「本音を言うのならば、何か長年の懸案事項が片付いていないことを再確認させられるようなポジションなのだ」という道作さんのコメントには物凄く深く頷いてしまいました。フィールディング・バイブルなんかはかなり頑張って具体的な形も示しているので、そういう頑張りをないがしろにするわけではないのですが。

なお道作さんは個人サイトで以前から捕手の守備評価に関して色々なアイデアを持って挑戦されており、その他コラムでもリードなどについて思索を示しておられるので、合わせて読むと面白いこと間違いなしかと思います。

捕手守備指標(試案)

クレタ人はウソつきだ、とクレタ人は言った。



【三宅氏参考分析(一塁手)】

目次にも出ているので)結論から言うと一塁では浅村が最優秀なのですが、これを「反則技」と称しているのが面白いところです。

普通一塁というのは一塁しか守れないような選手が守るわけですが、他の守備位置を普通に守れるくらい「動ける」選手が入ってくると異常に高い数値が出てしまうと。

守備指標を見ていると、こういうのは外野のレフトとかでよくある話です。レフトはレギュラーに「打てるけど守れない」タイプの選手が多く、そんな中で控えの選手が守備固めでそれなりの出場をしたとき、びっくりするくらいのプラスが計上される場合があります。

外野なら守備範囲の差はダイレクトに被安打に反映されやすそうだし一安打の価値も重いしわかりやすいのですが、これが一塁でも起こったというのが面白いです。一塁手といえば守備の影響が少なそうなので守備の優劣はそれほど語られず打撃力でレギュラーが選ばれる印象がありますが、例えばの話、めちゃくちゃ俊足で動ける選手を一塁手専門として鍛えたら、打撃がたいしたことなくても総合的な利得で他の一塁手を凌駕するようなことがあるんだろうか?(それを狙うのは戦略としてアリなのか?) なんて考えてしまいました。



【蛭川参考分析(二塁手)】

自分のは言及しても仕方がないと思ったのですが、Batted Ballsの評価を組み入れたことについて少し背景を付け加えておこうかと思います。

理論的にはUZRというのは非常によくできた守備指標だと思いますが、現実に計算をするためには打球の性質を細かく記録する必要があります。問題は、その記録って本当に信頼できるの?ということです。出塁したかしてないかみたいに客観的にはっきりした区別で記録できるものではなくて、打球はどこに飛んだか、種類は何か、強さはどうかというアナログな記録ですから、客観的に記録ができるかという疑問が生じたとしても無理もないところです。これは作業担当者の能力やモラルを疑うとかいう話ではなくて、そもそもそういう種類の記録を行うことの仕組みとしてどの程度の正確性・客観性が確保できるのだろうかと。

Colin Wyersが有名な論者ですが、MLBの方面でこの辺は健全な懐疑として言う人は言います。統計にとってバイアス(系統誤差)というのは厄介なもので、もしデータの採り方によって結果にバイアスが含まれるなら、(ランダムな誤差と違って)サンプルサイズを増やしてもこれは解消しません。だったらバイアスがないようなシンプルなデータの採り方(例えば単純にゴロに対する獲得アウトの比率)でやってみて、打球の分布によるランダムな誤差はただサンプルを増やすことで排除すればいいんじゃないの、という考え方もあるわけです。もちろんその場合は5年や10年など長いタームでしか守備指標を出せないですが。

個人的には、アナログだから誤差があり得るといっても三塁手の正面に飛んだ打球が一・二塁間への打球に見えるなんていうことはあり得ないのであって、打球の種類などに関しても、多少の誤差はあっても基本的に実際の分類が「真の分類」の近くに分布していれば結果にそう違いは出ないはずだし、打球がどこに飛んでも分母に数えられるような指標に比べれば守備の働きを表すものとして(完璧ということはないのは前提で)圧倒的に有益だと考えています。

アメリカではField f/xみたいな夢のある話も持ち上がっていますがいずれにせよ一般にオープンなものではありませんし、理想的なシステムが使えない以上はできる手段でなんとか頑張るしかありません。もっと言えば、Field f/xみたいなシステムがあったとしても、目的に対して誤差がゼロということはあり得ませんし正しく機能していることを一般ユーザーがどう確認するのかという話で、この辺の懐疑は言い出せばキリがないというところもあります。そういう中でゾーンのデータを収集する、アメリカで言えばBISなどの努力をただ否定するのも非建設的です。長期で見ればゾーンの情報を使わない守備指標と照らし合わせて結果がデタラメでないか検証していくこともでき、MGLはそのような検証でUZRの有効性を確認しています(フィールディング・バイブル3にて)。

ただ、上記の議論は上記の議論として、あくまで記録の正しさを外部からは確認ができないというのもありますし、系統的な偏りの可能性もあるにはあるので、少なくともゾーンの情報を使わない評価を参考として並べてみる意義はあると思いますし、最終評価を出す際には多少考慮するのもアリ、という考えです。

向き合い方の一例としてTangotigerは、翌年の守備成績を予測しようと思えば「UZR×40%+FRAA×10%+平均値×50%」というような形になるだろうとしていて、このときFRAA(ゾーンの情報を使わない守備指標)はUZRに含まれる観測データのバイアスを除去する働きをする、としています。個人的にもおそらくこのくらいの使い方が妥当なところだろうと感じます。

「なんでこの人はUZRがあるのにアウト/ゴロなんて気にするんだろう?」と思われたかもしれませんが、背景にはまぁそんなような議論が色々とあるわけです。

UZRやDRSのようなゾーンベースの守備指標があり、他方でそれらに対する一種のアンチテーゼとしてBaseball ProspectusのFRAAやTangotigerのWOWYみたいなゾーンを使わない評価手法があるというのは見ていくと面白い点です。



以上ぐだぐだと、原理や方法論の話ばかりで失礼しました。



『セイバーメトリクス・マガジン2』告知


『セイバーメトリクス・マガジン』が今年も出ました。
電子書籍で700円と、提供側が言うのもなんですがお得なお値段となっております。

電子書籍には馴染みのない方も多いかと思いますが、下手にリアル本を書店で探し回るより入手しやすかったりしますので、この機会にご検討いただければ幸いです(購入すると、いわゆる電子書籍用フォーマットのほかPDF形式のファイルもついてくるようです。)。


守備特集!

内容ですが、今年は守備特集。シーズンの振り返りとコラム、という昨年の構成とは趣が変わり、守備に焦点を当てた一冊となっています。複数の分析家が分担して、守備位置ごとに分析記事を書いています。最終的にアワードとして、各分析者の評価を総合して守備位置ごとの優秀者(ランキング)が出されています。

私(蛭川)は特集では二塁手の記事を担当しました。内容的にはUZRのPF補正を試みたり、最終的にUZR何点というだけでなく守備範囲を細かく見てどこに強み・弱みがあるのかといった点を分析しています。

守備の貢献度が具体的な点数で出るようになったというのはセイバーメトリクスによる守備評価の画期的なところですが、UZRという「ゾーン(グラウンド上のどこにどんな打球が飛んだか)」の情報を使った手法であることによって守備範囲の中身まで見ることができるというのは改めてすごいことだと思います。もちろん私の記事だけでなく、他の守備位置の分析でも守備のさまざまな中身に踏み込んだ内容となっています。


WARで投資効率を考える

守備企画以外にもコラムやデータが豊富に掲載されていて、私はWARで投資効率を考える内容のコラムをひとつ書いています。

総合指標であるWARと年俸を対比させると、端的に投資に対してどれだけの成果を上げることができたのかが浮かび上がってきます。単純に「この選手は年俸が低いのに活躍したから得をしたな」と考えるのも楽しいですし、それだけでなく全体的な傾向を見ていくことによってプロ野球の構造としてどういう部分にどういう要因で過大評価・過小評価が生まれているのかを考えることもできます。

例えば、打撃なんかは(セイバーメトリクスがどうとか言わなくても)比較的数字ではっきりと成果が確認しやすい部分です。ですので、打撃の優劣に関しては数字が年俸に反映されやすいと思われます。

一方で、守備に関しては、重要性が叫ばれながらもその評価はうやむやになっている印象があります。明らかな守備の名手がいるとして、それは打撃でいう3割30本の価値があるのかどうか? 2割8分20本程度なのか? あるいは、三塁手を無難にこなすのと遊撃手を無難にこなすのとで、チームへの貢献度は違うのか(違うとすればどのくらい)?

本来きちんと年俸を査定する上ではこういったことを明確にすべきでしょうが、これまでは明確にする方法がなく難しいところだった、という部分があると思います。

守備位置を横断的に評価するWARは、完璧と言えることはないにしろ、上記のような事柄について検証可能で合理的な尺度を提供します。それにより、勝利に対する貢献度と比較して投資額が適正かどうかというのをある程度浮かび上がらせることができます。

少し長くなりましたが、このあたりがそもそもの前提としてWARで投資効率を考えていくことの意義です。分析を行ってみて実際どういう示唆が得られるのかについては本編で。

ついでに、中日の落合GMがバッサバッサと切っている様子が連日報道されていますが、このあたりについても数字的に背景を抑えておくとよりニュースが楽しめるのではないかな、と思います。


ホット&コールド

以下は余談で単なる個人的なつぶやきですが、日本シリーズの田中投手「酷使」問題や落合GMの減俸の嵐の話を見ていると、改めて、一種の「構え」としてのセイバーメトリクスの意義を感じているところです。

簡潔な言葉でうまく表現できないのですが、感情とデータは排他的ではないだけでなく、データで気付きを得ることによってさらに情感豊かに野球を楽しむことができるのではないかということを最近特に考えます。

データの分析に関して、人は心を持っているからただ数字を押し付けてもダメだ、という反感はありがちですし、実際、真理だと思います。例えば、私のようなセイバーメトリクス好きが指標を使ってポンと「あなたの適正年俸は○○円です」と言ったとしても「お前に何がわかる」と言われて終わりでしょう。

しかし、チームに貢献してきたベテラン選手の減俸といったそのままでは感情的に受け入れ難い意思決定こそ、出来る限り数字を詰めることで納得ができるようになるのではないでしょうか。「あなたのチームへの過去の貢献には感謝しているが、これこれこういう筋道で客観的に現在の貢献度を考えると、球団としてはここまでの金額しか出せない」と。

気持ちが大事だからといって気持ちだけで話をしても、話が平行線となりむしろお互いの心を傷つける場合もあると思うのです。それに対して客観的に納得できる根拠が示されれば、お互いの立場を尊重しながら感情に折り合いをつけて話をしていくことができるかもしれません(落合GMに関しても、人物としての存在感だけでなく、過去の行動を含めて周囲が彼に何らかの「筋が通っている感じ」を持っているからこそ今回のようなことが可能なのではと感じます)。

酷使の問題についても深い思索で情感にも溢れた熱い論評がさまざまに流れています。しかしこれも、主観的な価値観で議論をしてもなかなか水掛け論以上のところに進まない難しさがあります。

ここにデータを使った分析を持ち込むと、検証可能な材料(あるいは考え方の枠組み)を提供するという意味で役に立ちます。例えば、球数を負担の指標としてどう負担を割り振れば投手の生涯でのWARが最大化されるか、など問題を具体的に定式化できますし、手間さえかければ計測(推測)可能かもしれません。

その分析結果を「答え」として押し付けるという意味ではなく、異なる人々がそれぞれに異なる価値観を持ちながらも有意義に対話をしていく手がかりになるのではないかということです。

データという一見すれば冷たい観点からの議論は熱い感情論をただ否定するものではありませんし、むしろ一旦冷静な思考を持つことによって、人間のホットな部分をより大事にすることができるのではないか。それを支援するのが(複雑な計算をするかは単なる手段の問題で)構えとしてのセイバーメトリクスでは、と。

本書『セイバーメトリクス・マガジン2』の中でアナリストの三宅さんがカーネマンの『ファスト&スロー』に触れていますが、主観の思い込みから逃れるヒントだけでなく、「熱く、かつ冷静に」野球と向き合うヒントも本書に隠れているかもしれません。



『セイバーメトリクス・リポート2』告知

告知です。

去年、日本初の本格的なセイバーメトリクス系アニュアル本の『セイバーメトリクス・リポート1』が出版されましたが、今年その2が出ます。前回に引き続き今回も参加させていただきましたので、発売はまだ10日くらい先のようですが、自分が書いたところを中心に内容を紹介しておきたいと思います。


全体的な概要としては去年と同じで、編成目線のチーム分析や分析家によるコラムなどで構成されています。プロ野球をセイバーメトリクスでザクザク分析したディープな本です。基本的には、セイバーメトリクスにある程度の興味があるすべての方にオススメできます。ただ単にセイバーメトリクスについて一般的な紹介をしているのではなく本格的な探求が読めます。

本格的といってもあえて難しく書いているとか説明を飛ばしているというわけではないですから何か予備知識がないと楽しめないというわけではないと思います。また、それでももし心配なようならセイバーメトリクスの基本的な事柄については当方のサイトなどでフリーで読めますのでそういったもので補っていただくという手もあります。



以下では私が関わった個別の内容について(全体について、掲載される分析のテーマなどは改訂されるかもしれないのでAmazonのページなどでご確認ください)。



「総合評価指標WAR」

最近MLB系の解析ではすっかりお馴染みになり、セイバーメトリクス好きであれば一度は名前を聞いたことがあるであろうWAR。とうとう日本版が算出されました。

打撃、走塁、守備、投球、すべてを総合して誰が貢献度が高いのかが一目でわかります。この数字が見られるだけでも買う価値ありと言えるかもしれないぐらい重要なステップです。

日本では馴染みがない数字ということで、その解説を書かせていただきました。
WARを構成する指標でありそれぞれ単体でも有用なwOBA、FIP、UZRについてざっと説明を行っており、評価の考え方についても基礎からロジックを辿って説明しています。ですのでWARの説明としてもそうですがこの解説部分だけでもセイバーメトリクス系の選手評価のロジックをまとめたものとしてお読みいただけるかと思います。

分析に使ってみるとわかりますが、WARは何より「便利」です。セイバーメトリクスでは色々な指標があるけど、数字は数字としてまとめたらどうなるのか、というのが一発でわかるので。



「2013年成績予測」

前回に引き続き、これから開幕するシーズンの成績予測値を算出しました。

去年はほとんど数字を載せるだけで詳しい説明を行っていなかったので、今回は成績予測の算出方法と考え方を詳しく述べた記事を書いています。

日本では現在のところ成績予測は親しまれていませんが、算出の考え方を踏まえると、お楽しみ程度にちょっと眺めるものとしては面白いとより思っていただけるかと思います。



「リリーフの本質・評価・最適配置」

リリーフについて理論的な探求を行ったコラムです。

そもそもリリーフってなんだよ。良いピッチャーから順に先発で起用して多くのイニングを投げさせたほうがいいんじゃないのか、という点から出発して、リリーフとは何かを考える内容になっています。

リリーフ起用という戦略が本質的にどういう意味を持っていて、その本質を踏まえるとどう評価するのがいいのか、どう起用するのがいいのか。

評価や最適配置はカチッとした完璧な答えが出るものではなかったりするのですが、根っこにあるのは「セイバーメトリクス的な視点・手法を通じて野球の原理・構造を明らかにしたい」という気持ちです。

「セイバーメトリクス」と聞くとまずOPSなどの指標を思い浮かべる方も多いかと思いますが、日本ではいまのところそのように「とりあえず色々な指標を計算してあーだこーだ言いながら眺めるもの」あるいは「新聞の成績欄を横に長くしたバージョン」というセイバーメトリクス観が強いことは否めないと感じています。しかし本当はそそのようなものだけではなくて、客観的なロジックやデータを材料として野球を根本から見つめ直すことがセイバーメトリクスの面白いところです。

四番・エース・抑え・流れ・セーブ…といった既存の言葉や切り口、そろそろ飽きてこない?というテーマにも自然と繋がってくるところで、もっと野球の本質と意味のある関係があって伸びやかに分析に使える言葉で語れるようにしたいと考えて新たな言葉の紹介もしています。

具体的にここではそれは勝利確率やレバレッジといった言葉ですが、改めて野球についてゼロから考えてそこから導かれる言葉を使うと、別にこれまで慣習的に用いられてきた言葉や視点に絶対の必然性があるわけではないんだということがなんとなくでもおわかりいただけるのではないかと。セイバーメトリクスの言葉のほうが野球を自然に読み解けて明快じゃないかと。

色々書いてややハードルを上げてしまっている感がありますが、これは私の記事がどうというより他の著者の方のパートを含め「セイバーメトリクス・リポート」全体で伝わって欲しいと個人的に思っているところだったりします。というか他の著者の方の執筆部分を読んでいただいたほうが私がここで言っていることが納得いただけるかと。






最後にちょっと売り文句になりますが、セイバーメトリクス好きなら買って損はしないと思います。

現在アメリカでセイバーメトリクスに詳しい人たちが「昔はビル・ジェイムズのベースボール・アブストラクト読んだもんだよね」と語り合うように、本書を読んでおけばこれから間違いなく日本でも普及するセイバーメトリクスについて後々「日本でのセイバーメトリクス誕生期の「リポート」シリーズは読んだなー」と語れること間違いなし(?)です。

私が書いた部分は全体からすればほんの一部であって、他の部分については鉄板の執筆陣となっております。

また、日頃からの想いがあるのでつい色々書いてしまいましたが、基本的なことを言えば、別に大袈裟で小難しいことはなく野球好きなら気軽に楽しめるはずのものだと思います。統計というと無機質な感じですが言ってみれば「野球が好きすぎる」のひとつの形なので。

長くなり失礼しました。

「セイバーメトリクス・リポート」を置いている可能性がある書店

先日から告知しているセイバーメトリクス・リポートですが、Amazonで一時的に在庫切れとなっていたようです。ご迷惑おかけしております。
現在は「通常5~7日以内に発送」との表示になっておりますが、一部のリアル書店でも入荷されているようで、情報をいただきましたので共有いたします。

以下は、そこに行けば確実にあるという保証ができるものではありませんので、事前にお電話などでご確認下さい。




『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート1』が
置いてある可能性がある書店(2012年3月13日現在)

※事前に電話などで在庫をご確認下さい。

紀伊國屋書店様
http://www.kinokuniya.co.jp/store/
丸善・ジュンク堂様
http://www.junkudo.co.jp/tenpo/
ブックファースト様
http://www.book1st.net/shops/
芳林堂書店様
http://www.horindo.co.jp/map/map_rosen.html
あゆみブックス様
http://www.ayumibooks.jp/
リブロ様
http://www.libro.jp/shop_list/
ブックスユニ本郷店様
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SF/ShotenHome?shotenCode=94922
八重洲ブックセンター様
http://www.yaesu-book.co.jp/
有隣堂様
http://www.yurindo.co.jp/storeguide/?preview_flag=0&flag_no=121
三省堂書店様
http://www.books-sanseido.co.jp/shop/
書泉様
http://www.shosen.co.jp/
オークスブックセンター様
http://www.oaksbc.co.jp/
青山ブックセンター様
http://www.aoyamabc.co.jp/
あおい書店様
http://www.aoishoten.co.jp/shop/
ブックデポ書楽様
http://www.syoraku.co.jp/

【東京都】
新宿/紀伊國屋書店新宿本店、新宿南店、ジュンク堂書店新宿店、ブックファー
スト新宿店、芳林堂書店高田馬場店、あゆみBOOKS早稲田店
池袋/ジュンク堂書店池袋店、リブロ池袋店
渋谷/MARUZEN&ジュンク堂渋谷店、ブックファースト渋谷公園通り店、Book
Cumu NHK店
紀伊國屋書店渋谷店、笹塚紀伊國屋書店笹塚店、
新橋/芳林堂書店汐留店
東京/丸善丸の内本店、八重洲ブックセンター
大手町/紀伊國屋書店大手町ビル店
本郷三丁目/ブックスユニ本郷店
神保町/三省堂書店神保町本店、書泉グランデ
秋葉原/書泉ブックタワー
水道橋/オークスブックセンター東京ドームシティ店
六本木/青山ブックセンター六本木店
中野/あおい書店中野本店
吉祥寺/ジュンク堂書店吉祥寺店
国分寺/紀伊國屋書店国分寺店
北千住/紀伊國屋書店北千住マルイ店
豊洲/紀伊國屋書店ららぽーと豊洲店
二子玉川/紀伊國屋書店玉川高島屋店

【埼玉県】
北与野/ブックデポ書楽
さいたま新都心/紀伊國屋書店さいたま新都心店
浦和/紀伊國屋書店浦和パルコ店
大宮/ジュンク堂書店ロフト大宮店
川越/紀伊國屋書店川越店

【千葉県】
津田沼/丸善津田沼店
流山/紀伊國屋書店流山おおたかの森店

【神奈川県】
川崎/有隣堂川崎BE店、
横浜/紀伊國屋書店横浜店
桜木町/紀伊國屋書店横浜みなとみらい店
関内/有隣堂本店、関内芳林堂書店セルパ店
鴨居/紀伊國屋書店ららぽーと横浜店

【北海道】
札幌/紀伊國屋書店札幌本店、紀伊國屋書店オーロラタウン店、MARUZEN&ジュ
ンク堂札幌店
小樽/紀伊國屋書店小樽店

【東北】
弘前/紀伊國屋書店弘前店
仙台/ジュンク堂書店仙台本店、あゆみBOOKS仙台店、紀伊國屋書店仙台店
盛岡/ジュンク堂書店盛岡店

【中部】
静岡/MARUZEN&ジュンク堂新静岡店
前橋/紀伊國屋書店前橋店
新潟/ジュンク堂書店新潟店
富山/紀伊國屋書店富山店
金沢/紀伊國屋書店金沢大和店
福井/紀伊國屋書店福井店
名古屋/ジュンク堂書店名古屋ロフト店
西春日井郡/紀伊國屋書店名古屋空港店

【関西】
京都/ジュンク堂書店京都BAL店
大阪/MARUZEN&ジュンク堂梅田店、ジュンク堂書店大阪本店、ブックファース
ト梅田店、ジュンク堂書店千日前店、ジュンク堂書店難波店、紀伊國屋書店梅田
本店、紀伊國屋書店本町店、紀伊國屋書店京橋店、紀伊國屋書店泉北店、紀伊國
屋書店高槻店、堺紀伊國屋書店堺北花田店
加古川/紀伊國屋書店加古川店
神戸/ジュンク堂書店三宮店、ジュンク堂書店三宮駅前店、紀伊國屋書店神戸
店、紀伊國屋書店西神店
川西/紀伊國屋書店川西店
大津/紀伊國屋書店大津店

【中国】
岡山/紀伊國屋書店クレド岡山店
広島/MARUZEN&ジュンク堂広島店、ジュンク堂書店広島駅前店、紀伊國屋書店
広島店
紀伊國屋書店ゆめタウン広島店

【四国】
高松/紀伊國屋書店高松店
丸亀/紀伊國屋書店丸亀店
徳島/紀伊國屋書店徳島店、紀伊國屋書店ゆめタウン徳島店
松山/ジュンク堂書店松山店

【九州】
福岡/ジュンク堂書店福岡店、紀伊國屋書店福岡本店、紀伊國屋書店ゆめタウン
博多店
久留米/紀伊國屋書店久留米店
大分/紀伊國屋書店大分店
佐賀/紀伊國屋書店佐賀店
長崎/紀伊國屋書店長崎店
熊本/紀伊國屋書店熊本光の森店、紀伊國屋書店熊本はません店
鹿児島/紀伊國屋書店鹿児島店、ジュンク堂書店鹿児島店

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管理者:クロスケ

野球全般好きで、プロ野球をよく見ますが特定の球団のファンではありません。
セイバーメトリクス(野球の統計的分析)の話題が多く、馴染みのない方にはわかりにくい内容があるかもしれませんがサイトに体系的にまとめています。

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