Baseball Concrete Blog

主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

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『セイバーメトリクス・リポート2』告知

告知です。

去年、日本初の本格的なセイバーメトリクス系アニュアル本の『セイバーメトリクス・リポート1』が出版されましたが、今年その2が出ます。前回に引き続き今回も参加させていただきましたので、発売はまだ10日くらい先のようですが、自分が書いたところを中心に内容を紹介しておきたいと思います。


全体的な概要としては去年と同じで、編成目線のチーム分析や分析家によるコラムなどで構成されています。プロ野球をセイバーメトリクスでザクザク分析したディープな本です。基本的には、セイバーメトリクスにある程度の興味があるすべての方にオススメできます。ただ単にセイバーメトリクスについて一般的な紹介をしているのではなく本格的な探求が読めます。

本格的といってもあえて難しく書いているとか説明を飛ばしているというわけではないですから何か予備知識がないと楽しめないというわけではないと思います。また、それでももし心配なようならセイバーメトリクスの基本的な事柄については当方のサイトなどでフリーで読めますのでそういったもので補っていただくという手もあります。



以下では私が関わった個別の内容について(全体について、掲載される分析のテーマなどは改訂されるかもしれないのでAmazonのページなどでご確認ください)。



「総合評価指標WAR」

最近MLB系の解析ではすっかりお馴染みになり、セイバーメトリクス好きであれば一度は名前を聞いたことがあるであろうWAR。とうとう日本版が算出されました。

打撃、走塁、守備、投球、すべてを総合して誰が貢献度が高いのかが一目でわかります。この数字が見られるだけでも買う価値ありと言えるかもしれないぐらい重要なステップです。

日本では馴染みがない数字ということで、その解説を書かせていただきました。
WARを構成する指標でありそれぞれ単体でも有用なwOBA、FIP、UZRについてざっと説明を行っており、評価の考え方についても基礎からロジックを辿って説明しています。ですのでWARの説明としてもそうですがこの解説部分だけでもセイバーメトリクス系の選手評価のロジックをまとめたものとしてお読みいただけるかと思います。

分析に使ってみるとわかりますが、WARは何より「便利」です。セイバーメトリクスでは色々な指標があるけど、数字は数字としてまとめたらどうなるのか、というのが一発でわかるので。



「2013年成績予測」

前回に引き続き、これから開幕するシーズンの成績予測値を算出しました。

去年はほとんど数字を載せるだけで詳しい説明を行っていなかったので、今回は成績予測の算出方法と考え方を詳しく述べた記事を書いています。

日本では現在のところ成績予測は親しまれていませんが、算出の考え方を踏まえると、お楽しみ程度にちょっと眺めるものとしては面白いとより思っていただけるかと思います。



「リリーフの本質・評価・最適配置」

リリーフについて理論的な探求を行ったコラムです。

そもそもリリーフってなんだよ。良いピッチャーから順に先発で起用して多くのイニングを投げさせたほうがいいんじゃないのか、という点から出発して、リリーフとは何かを考える内容になっています。

リリーフ起用という戦略が本質的にどういう意味を持っていて、その本質を踏まえるとどう評価するのがいいのか、どう起用するのがいいのか。

評価や最適配置はカチッとした完璧な答えが出るものではなかったりするのですが、根っこにあるのは「セイバーメトリクス的な視点・手法を通じて野球の原理・構造を明らかにしたい」という気持ちです。

「セイバーメトリクス」と聞くとまずOPSなどの指標を思い浮かべる方も多いかと思いますが、日本ではいまのところそのように「とりあえず色々な指標を計算してあーだこーだ言いながら眺めるもの」あるいは「新聞の成績欄を横に長くしたバージョン」というセイバーメトリクス観が強いことは否めないと感じています。しかし本当はそそのようなものだけではなくて、客観的なロジックやデータを材料として野球を根本から見つめ直すことがセイバーメトリクスの面白いところです。

四番・エース・抑え・流れ・セーブ…といった既存の言葉や切り口、そろそろ飽きてこない?というテーマにも自然と繋がってくるところで、もっと野球の本質と意味のある関係があって伸びやかに分析に使える言葉で語れるようにしたいと考えて新たな言葉の紹介もしています。

具体的にここではそれは勝利確率やレバレッジといった言葉ですが、改めて野球についてゼロから考えてそこから導かれる言葉を使うと、別にこれまで慣習的に用いられてきた言葉や視点に絶対の必然性があるわけではないんだということがなんとなくでもおわかりいただけるのではないかと。セイバーメトリクスの言葉のほうが野球を自然に読み解けて明快じゃないかと。

色々書いてややハードルを上げてしまっている感がありますが、これは私の記事がどうというより他の著者の方のパートを含め「セイバーメトリクス・リポート」全体で伝わって欲しいと個人的に思っているところだったりします。というか他の著者の方の執筆部分を読んでいただいたほうが私がここで言っていることが納得いただけるかと。






最後にちょっと売り文句になりますが、セイバーメトリクス好きなら買って損はしないと思います。

現在アメリカでセイバーメトリクスに詳しい人たちが「昔はビル・ジェイムズのベースボール・アブストラクト読んだもんだよね」と語り合うように、本書を読んでおけばこれから間違いなく日本でも普及するセイバーメトリクスについて後々「日本でのセイバーメトリクス誕生期の「リポート」シリーズは読んだなー」と語れること間違いなし(?)です。

私が書いた部分は全体からすればほんの一部であって、他の部分については鉄板の執筆陣となっております。

また、日頃からの想いがあるのでつい色々書いてしまいましたが、基本的なことを言えば、別に大袈裟で小難しいことはなく野球好きなら気軽に楽しめるはずのものだと思います。統計というと無機質な感じですが言ってみれば「野球が好きすぎる」のひとつの形なので。

長くなり失礼しました。

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いつもはあまり気にしないバントのこと

セイバーメトリクス好きはさぞかしバントが嫌いなんだろうと思われているのかどうかわかりませんが、自分は普段はバントにはあまり興味はありません。

統計データという名の過去の事実を普通に見て、普通に筋道を立てて考えれば、一般的には有効でない戦術なんだろうなとは思います。ただ、実際には打力の低い打者がバントをしたところで、仮に勝利確率が下がるとしても大したものではなくヒッティングの場合と顕著な差はないですから別に好きにすればいいんじゃないの、と。

しかし今回のWBCを見ていて、日本代表チームの病的なまでのバント多用は正直不快に感じてしまいました。

前提として、よほどの弱打者でない打者がバントをすれば基本的には勝利の見込みは下がります。単に大量点の見込みがなくなるということではなくて、1点だけを狙う場面でもバントは別に有効な戦術ではありません。今回の代表の試合では、相手の投手が良いと考えるにしても、日本でトップクラスの打力を持つ選手達が平気でバントをするので驚きました。

当然、選手は死に物狂いでやっているでしょうし、勝つか負けるかは彼らの名誉に関わる大きな問題です。采配は彼らを後押しこそすれ、足を引っ張るものであってはならないことは言うまでもないです。そこで勝利の見込みを下げるバントのサインを出しまくることについて「データとか調べてないからバントのほうが確実に点が取れるって勘違いしちゃってた、ゴメンネ」では済まされないかと。

選手に向かって「確実にホームランを打て」「絶対に完封しろ」というのは無理な注文ですが、ベンチがバントのサインを出さないというのは意思ひとつでできることです。気付けば直せる勘違いで日本代表チームを不利に追い込んでいるって、あまりにももったいないことではないかなぁと。

何も高度で特殊な数字を扱ってはじめてわかることというのではありません。過去の事実をごく単純に見れば、客観的な経験として、バントをする前の状況のほうが後の状況より点が入りやすいんだなとわかることです。

伝統的な戦術論を軽んじているわけでもありません。とはいえ、過去にバントが有効だと信じられていたとしても、それはそれとして、経験から学んで野球に対する理解を改善させていけばいいだけのことでしょう。そこに「新思考派」とかキャッチコピーをつけるほどのものですらないです。かつては「権藤権藤雨権藤」のような投手の酷使があったものが、さすがにそこまでやれば投手が潰れることがわかって、今ではそこまでの酷使は行われません。これも普通に経験から学んで意思決定を改善させた例で、バントについても同じように減らしていけばいいだけのことだと思うのですが。

とりあえず目先の進塁にとらわれすぎなように思います。「あと一本が出ない」って、その一本が出るための機会(アウト)を自ら捨てているわけなんで……。

注釈として、もちろんセイバーメトリクスは単純に平均的に見込まれる得点の多寡だけでバントの是非を議論しているわけではありませんし、バントがどんな場面でも100%ダメだと言っているわけではありません。技術的な部分についてはBaseball Prospectusが出版している『Baseball Between the Numbers』などがおすすめです。


短期決戦とスモール(ベース)ボール

初戦の勝利に安心しつつ、WBC開幕に寄せて、というわけではないですが……どうしても気になってしまったので(試合開始前に)殴り書きしたもの。ちょっと長いです。観戦が一息ついたときにどうぞ。




セイバーメトリクスと短期決戦の関係についてはわけのわからない誤解が多いと感じます。何故かよく聞くものに、セイバーメトリクス的なチーム作りはポストシーズン(短期決戦)に弱いという説があります。

これ自体は『マネー・ボール』本編でも触れられていて、別にそういうわけじゃない(少なくとも積極的な根拠はない)というのは普通に読めばわかると思うのですが、何故かそう素直に理解されていません。ビリー・ビーン自身の「短期決戦の結果は知ったこっちゃない」的な発言が「セイバーメトリクスは短期決戦には通用しない。そしてそのことは利用者自身認めている」と妙に拡大解釈されている感があります。もちろんビリー・ビーンの発言は、短期決戦ではセイバーメトリクスの影響が変わるということではなく、試合数が少なすぎて実力が反映されないから結果はほとんどランダムであり負けても仕方がないというごく単純な意味でしょう。

出塁率・長打率を重視するセイバーメトリクス的な戦略に対して、何故か短期決戦は積極的に犠打や盗塁をして「確実に」点を取るべきだという、いわゆるスモール(ベース)ボール的な戦術が強く主張されます(あえてスモールボールの定義は置いておきます)。今回のWBCにあたっても、そういう種類の主張を実際に耳にしました。しかし統計的には盗塁や犠打は特に確実な戦術というわけではありません。

普通に考えれば、一試合において勝率の期待値を高めることができる方策があるならそれを繰り返せばレギュラーシーズンでも有効ですし、レギュラーシーズンを通して勝率の期待値を高める方策が一試合単位で見たら逆に期待値を下げる、などということはおかしな話です。短期と長期で有効か無効かが変わると考えるにはかなり特殊な理屈が必要でしょう。自然に考えられるのは、戦略/戦術と言えるかは微妙としても「優秀な投手の集中的な起用」くらいでしょうか。

また、有名な研究のひとつにポストシーズンの「シークレット・ソース」というものがあります。これは米国のセイバーメトリクス系シンクタンクBaseball Prospectusが出版した『Baseball Between the Numbers』に収録されている論文に書かれているのですが、ポストシーズンでは以下の3つの要素が重要だとする説です。

・クローザーの貢献度
・投手の奪三振率
・守備力

なんとなくポストシーズンは特殊であることを示しているようで面白かったり、打撃ではなく守りを重視していることからスモールボールっぽく見えて日本人に馴染みがいいのかセイバーメトリクスのコンセプトの中では認知度の高いのシークレット・ソースですが、取り扱いにはかなり注意が必要です。

まず前提として、分析者はポストシーズンの成功とレギュラーシーズンの各種指標との相関性を分析したわけですが、示されている3つの要素とポストシーズンの成功との関連性というのは定量的には決して強くはありません。過去のデータを網羅的に調べてみたら一部の項目に多少の相関が見られた、という種類のリサーチです(分析者の発言によって真理が左右されるわけではありませんが、当該リサーチを行ったネイト・シルバーも後日の談話であれは構造的に意味のあるものではなく過去のデータにたまたま見られた傾向かもしれない、ということを言っています)

あくまでも得点が多く取れて失点が少ないほうが良いというレギュラーシーズンもポストシーズンも関係ない一般的な大原則が前提にあって、さらに顕微鏡を通して細かく見てみたらシークレット・ソースの3つの要素がちょっとだけ重要かも、ということです。まずは常識的な大原則があるということを忘れるわけにはいきません。例えばシークレット・ソースの要素に優れている得点率4.5・失点率3.5のチームとそうでない得点率5.5・失点率4.0のチームであれば、普通に後者の方が(得失点差が大きい分)ポストシーズンにおける勝利の見込みが高いということはあり得ます。仮にポストシーズンを見据えてシークレット・ソースを重視したチームを編成してもトータルの得点・失点が悪ければ本末転倒になりかねません。

そしてまた重要なことに、シークレット・ソースは攻撃における戦術(?)のスモールボールとは関係がありません。『Baseball Between the Numbers』の論文にも、スモールボールがビッグボールに比べてポストシーズンに有効であることの有意な統計的根拠はないとはっきり書かれています。

チーム編成として失点の少なさを重視するスタイルを含めてスモールボールと呼ぶなら、俊足・小型の野手が多くなりそれに伴って攻撃面で犠打や盗塁が増えるということであれば結果的な関連性はあるかもしれません。しかし攻撃面だけを切り取って見てみると、盗塁や犠打で得点を「作り出そうとする」スタイルも、四球や本塁打で「点が生まれるのを待つ」スタイルも、どちらがポストシーズンで有効ということはなかったのです。

シークレット・ソースの論文ではポストシーズンでは(レギュラーシーズン)の得点が多いことよりも失点が少ないことのほうが重要だという解析結果が示されているわけですが、そうなる理由についてはレギュラーシーズンに対するポストシーズンは相手に「弱いチーム」が存在しないこと、打撃力に対して得点力が非線形の関係を持っていることが関係しているのではと推測されており、これは長期か短期かとは別問題です。「短期決戦」だと特別に守り抜く野球が重要になるといった要素があるとわかったわけではありません。正確かはわかりませんが、守りの重要性が上がるというより得点力はレギュラーシーズンの得点数で評価するとポストシーズンの条件に当てはめるには過大評価になる、というイメージでしょうか。

そもそもポストシーズンに限らず失点が少ないほうがいいのは当たり前で、それに関してはリソースの分配に気を配る必要のない国際大会では攻撃と関係させて考える意味はないでしょう。

「日本は長打力では他の国にかなわないから犠打と盗塁でつないで点を取る日本らしい野球で攻めるべき」という主張を未だに本当に聞きますが、この主張が思い込みや詭弁という以前に意味不明ということは説明不要だと思いたいです。日本の打線が犠打や盗塁を重視するかは、そうする場合とそうしない場合とでどちらが日本打線の得点の期待値が高まるかによって判断されるべきであって、他国の打線の長打力は関係ありません。




短期決戦は試合数が少なくて結果がランダムに大きくゆだねられることは、セイバーメトリクスの有効性でなくなることを意味しません。
スモールボールを失点の少なさを重視する戦略だとしても失点は少ないほうがいいのは当たり前で、攻撃における戦術の選択の議論とは原則的に関係ありません。
短期決戦で犠打・盗塁を積極活用するチームが強いという統計的に有意な傾向はありません。
シークレット・ソースもスモールボールとは直接関係ありません。



ちょっとセイバーメトリクスと短期決戦の関係が変に捉えられすぎている、シークレット・ソースに関しては誤解されているか影響力が過大評価されていると感じたので書いてみた記事でした。ちなみに、シークレット・ソースの研究を批判しているわけではないですよ。むしろ面白い研究だと私も思うのですが、話として面白いからこそ受け取る側は印象が大きくてその定量的な影響を過大評価しがちで注意が必要だと思います。

また、価値観として犠打や盗塁が嫌いなわけでもなんでもありません。プレーとしては盗塁を見るのは特に好きですし。ただ事実が事実として普通に評価されないのはどうなのだろうと思います。


※最後に、もちろんこういう話は、詳細には、日本でいうスモール(ベース)ボールが明確に定義されないことには議論しようがないです。


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管理者:クロスケ

野球全般好きで、プロ野球をよく見ますが特定の球団のファンではありません。
セイバーメトリクス(野球の統計的分析)の話題が多く、馴染みのない方にはわかりにくい内容があるかもしれませんがサイトに体系的にまとめています。

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