Baseball Concrete Blog

主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

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打線シミュレーション計画 その3

【長打か出塁か】


まず先にデータを出します。
自前の打線シミュレータを利用して弾き出した結果で、得点の入り方の構造的な実態に迫るため前回の記事よりもやや細かい造りのシミュレータを使用しています。
2007年セリーグの個人打撃成績を使用しまして、当該打者が9人並んだと仮定した打線の得点率などを算出しました。
シミュレーションの試行数は各1万試合です。

選手RPG SDexSD DIFFWinPct H-WinPctWIN+ Gain
青木 宣親8.31 4.66 4.59 0.07 .766 .770-0.66 1.32
タイロン・ウッズ8.21 4.61 4.55 0.06 .762 .766-0.60 1.49
高橋 由伸8.16 4.45 4.54 -0.08 .766 .7640.25 1.57
ラミレス7.01 3.98 4.10 -0.12 .705 .7050.04 1.58
村田 修一6.99 4.00 4.09 -0.09 .701 .704-0.37 1.61
ガイエル6.65 3.98 3.96 0.02 .674 .683-1.17 1.53
小笠原 道大6.55 3.84 3.92 -0.08 .672 .676-0.52 1.57
阿部 慎之助6.08 3.71 3.74 -0.03 .636 .642-0.89 1.58
栗原 健太6.05 3.68 3.73 -0.05 .635 .640-0.77 1.51
金本 知憲5.93 3.71 3.68 0.03 .623 .631-1.12 1.52
佐伯 貴弘5.93 3.66 3.68 -0.02 .624 .631-0.94 1.50
中村 紀洋5.66 3.60 3.58 0.02 .600 .609-1.17 1.45
森野 将彦5.62 3.58 3.56 0.02 .598 .605-1.06 1.40
新井 貴浩5.49 3.51 3.51 0.00 .589 .595-0.78 1.49
李 承ヨプ5.21 3.28 3.40 -0.13 .569 .5690.01 1.66
二岡 智宏5.15 3.41 3.38 0.03 .557 .563-0.93 1.43
谷 佳知5.03 3.42 3.33 0.08 .544 .551-1.04 1.30
井端 弘和4.90 3.44 3.29 0.16 .529 .539-1.30 1.24
金城 龍彦4.84 3.32 3.26 0.06 .527 .532-0.73 1.37
吉村 裕基4.77 3.18 3.23 -0.06 .525 .5250.02 1.56
田中 浩康4.63 3.21 3.18 0.03 .509 .511-0.26 1.32
前田 智徳4.51 3.12 3.13 -0.02 .497 .4970.08 1.42
梵 英心4.44 3.12 3.11 0.01 .490 .4900.08 1.43
相川 亮二4.37 3.23 3.08 0.15 .478 .481-0.41 1.13
鳥谷 敬4.27 3.13 3.04 0.09 .470 .4690.04 1.26
赤星 憲広4.11 3.09 2.98 0.11 .454 .4510.38 1.09
宮本 慎也4.06 3.03 2.96 0.07 .449 .4450.55 1.23
谷繁 元信3.82 3.00 2.87 0.13 .421 .4140.90 1.21
仁志 敏久3.63 2.75 2.80 -0.04 .405 .3902.09 1.33
李 炳圭3.28 2.56 2.66 -0.11 .367 .3433.25 1.35
飯原 誉士3.21 2.56 2.64 -0.07 .358 .3343.41 1.40
シーツ2.91 2.43 2.52 -0.09 .323 .2924.41 1.30
東出 輝裕2.66 2.38 2.43 -0.05 .293 .2575.10 1.08
荒木 雅博2.45 2.25 2.35 -0.09 .268 .2265.83 1.13
野手平均4.53 3.14 3.15 0.00 .500 .5000.00 1.38


RPG…試合あたり得点。
SD…試合あたり得点の標準偏差。
exSD…当該RPGに見込まれる標準偏差。単回帰由来。
DIFF…SDからexSDを引いたもの。値が大きいほど見込みに対して試合ごとの得点のばらつきが大きい。
WinPct…その2で行ったような方法で計算した打線の勝率。対象は野手平均打線。
H-WinPct…ヘンリー理論による期待勝率。
WIN+…ヘンリー理論の期待勝率と比べての、140試合あたりの勝利の上積み。
Gain…(塁打+四死球)/(安打+四死球) 出塁ひとつあたりの平均塁数。長打力寄りか否かを表す。


こう並べると打者の能力ランキングのようにも見えてしまうかもしれませんが、便宜的に名前と成績を借りているのであってここでは各打者の能力に言及したいわけではないことをご理解頂きたいと思います。
どのような打線がどのような傾向を示すのかの素材として、肉体的・技術的にあり得る範囲の偏りの打線のデータを集めたかっただけです。
2007年セリ-グのデータであることにも特に意味はありません。
ただ最近の記録でご覧になる方も名前を聞けばどういう打者かイメージしやすいかと思いまして。

技術的な断りとしては、いずれの打線も走塁に関する設定は揃えています。
例えば単打で二塁走者が生還する確率などは、赤星打線でも阿部打線でも変わりません。
また、今回は併殺打をイベントとして含んでいますがこれも状況に対して一定の確率で発生します。
走者の進塁に関する細かい設定は記事の最後にくっつけておきます。


僕のシミュレーションの結果などというのは末端の実験結果に過ぎませんから、ここからいかに普遍的な要素を見つけ出すかが勝負になるわけですが
僕では解釈の能力が及ばないかもしれませんが思ったことをグダグダと書いてみようと思います。


ひとまず前回のことを振り返りますが、打線に見込まれる勝率を求めながら青木打線と高橋打線を例として「本塁打に依存した得点力を持つ打線は試合ごとの得点の偏差が小さいようだ」ということに触れました。
もしかすると 長打VS出塁 の形で受け取られた方もいるかもしれませんが正直なところこれに関して言いたかったのは“本塁打の否定の否定”ぐらいのことです。
以前、巨人が史上最強打線とか言われながら思うように勝てなかった時に「ホームランを待ってたってそんないつも出るもんじゃないんだから。アテにならない(だから盗塁やバントをしないといけない)」というふうな解説者のコメントを聞いた記憶があるので
その考え方で本当にいいのか?と疑問を呈す、前回の時点ではそんな気持ちで書きました。

そもそも、数字として大して違いません。
見込み標準偏差と実際に示された標準偏差との差の標準偏差は(あぁ、ややこしい)0.1に満たないです。
攻撃パーツが著しく偏る「ある一人の打者打線」を利用してもこうなのですから
戦術を除けば、ほとんど試合ごとの得点のバラつきというのは得点率から推定できるということでしょう。
単純な得点率の高低ではない分布の違いがどの程度影響力を持つかは[WIN+]項目でひとつの目安として算出を試みていますがちょっとこの数字も意味があるのかはなんとも言えません。
とはいえ、まぁ傾向に意味があったら面白いという興味でその小さな部分を強引に掘り下げてみます。


今回一応数字を出していますので確認してもらえるかと思いますが
DIFFなどバラつきの大きさを表す数字とGainなど得点力の中身の傾向を表す数字とは相関があります(実際のシーズンのデータを利用してもこういったものを計ること自体はできると思いますがどうしてもノイズを含むので原因を断定しにくいです)。
このことから同じ得点率でも、内容が長打に偏っている打線のほうが安定して得点を上げることができると考えられます。
ただ改めてデータを集めて得点の分布を眺めてみて「同じ得点率でもバラつきが…」とかよりも別の言い方をしたほうがよいかなと思い始めました。

出塁寄りの場合集中のしやすさによって大量得点の機会がやや多く(いわゆる出塁率10割的な状態が相乗的に出現しやすいのでしょう)、そういう試合が平均を引き上げています。
反面上手く集中しない時には長打がないので効率的に得点を顕在化させることができず、3アウトの制約とモロに向き合う羽目になって意外と点が取れない試合も出てくる。
バラつきの内容はそんなところだと思います。
最終的に言うことは「出塁寄りのほうがバラつきが大きい」と同じなんですが、やや強引に言うと「同じ得点率でも、出塁寄りの場合勝利に有効な得点力は低い」ようにも見えます。
大量得点試合の発生によって平均は引きあがるものの中央値とか最頻値的な見方をすると同じ得点率の長打寄り打線のそれより低い、というような具合。
意外かもしれませんが、出塁の積み重ねで点をとっていこうってチームのほうが勝率に対して余計な大量得点試合が多いことになります。
運任せ的な部分が大きいんですね。3アウトシステムにイニング間の集中で対抗しようというのはかなり難しい挑戦だということが伺えます。
比較して長打寄りの打線は、物凄く集中して点を取っちゃうこともないけれども少ない集中でも点を入れることができるためにわりといつも一定の点数が入るという論理でしょう。
(イニングに大量得点をするための“壁”はあくまでアウトです。いかに一撃が強かろうとアウトを取られればイニングは終わります。そして一気に集中するケースにおいてはそのパーツが長打か否かはあまり関係がなくなります)

ちょっと前置きが多い上に言い方がはっきりしてないかもしれませんね。
数字上の傾向としては出塁力依存の攻撃力よりも長打力依存の攻撃力のほうが試合ごとの得点が安定するというのがここでのひとつの結論です。
前回よりはその確信を強めています。何故そのようになるかは上記の通りというわけです。



あとはそういうのを戦略に活かせるかという問題ですかね。
それに繋がる話としてひとつ気付いたのが、単打とか四球に頼る打線は多少出塁率を上げていっても併殺打の壁にぶつかるということです。
出塁率を上げていけばもちろん得点率は上がっていくのですが、出塁が多くなると凡打を打った際に一塁走者が居る確率も上がってしまいます。
なまじ得点率が上がりかけている分併殺による得点期待値の損失も大きく、出塁で得点を稼ごうとしても「意外と得点率が上がらない」ってことが出てくるんですね(冒頭のデータを利用しても、RC27やXR27との差で見ることができます)。
これもまた強く言うほどの影響ではないし現実には戦術や他の面の強化で比較的容易に防げるのかもしれませんが。
それに比べると出塁のうちに占める長打の割合が多い打線は併殺打に関してそしらぬ顔です。
あるラインまでは、出塁率の向上より長打率の向上のほうが素直に得点率の向上に結びつくのかもしれません。
もしそうだとすると得点の安定と重ねて戦略的に“長打力の強化”がオイシイ選択である可能性は高まります。
下手に出塁に偏ったチームになった場合併殺を恐れて犠打や盗塁の企図を乱発し必要以上に得点期待値を損ねてしまう懸念もなくはありません。
ただし、しつこく言いますが例によってその辺の影響はあるとしても強くはないだろうと思います。

またどういう場合で得点の安定が有効かというと、それは単純に強いチームです。
得点率 5.0 失点率 3.0 ってほど強いチームはさすがにないでしょうが存在したとして
標準偏差が大きければ大きいほど運任せの戦いになってしまい、小さければ小さいほど確実に勝てます。
そういうケースで、例えばですが
多少総得点を下げてでも長打寄りの選手起用をすることで勝ちを安定的なものにする、なんてことがもし有効なら面白いです。
平均と偏差の駆け引きなんて相当込み入った話で、実際にはほぼ影響がないかもしれずただ単に平均の向上を目指したほうが遥かに有効なのかもしれませんが。

そのことを視点をひっくり返して投手側に応用することも出来ますね。
一人が打線を引き継ぐということを考えると、むしろこちらのほうが現実的かもしれません。
「被長打率・被出塁率」の考えで打線と同じことが言えるはずですから
強豪が弱小と当たる際には同じ防御率なら偏差の小さい被長打率寄りの投手を、逆に弱小側は四死球出すけど被長打は少ないなんて投手を「たまたまハマる」のを期待して送り出す、という方法。
いずれにせよ力の勝るものは偏差を小さく、劣るものは(まぐれを起こすために)大きくしなければいけないことになります。
その意味では、長打寄りのほうが得点が安定するとしてもその方が良いと一概に言えるわけではありません。



基本的には得失点差のわりに効率的に勝つ要素の向上は得失点差を改善することに比べて重要度は低いでしょうし(特に攻撃側においては)
また現実には運に左右されやすいこととされにくいことで温度差があり、その辺も今回のような話をそのまま野球の考え方として使えるかどうかの怪しむべきところなんですが
単純に僕が言いたいのは、長打の尊さです。
マネー・ボールなどあって出塁率の名前が繰り返されることは多いですが長打も非常に重要です。
本塁打に依存すると効率的に勝てないというならともかく、そうでないなら素晴らしい要素ですよね。
長打の美点としては

・得点への寄与が高い
・長打系指標は年度間の相関が強くチームづくりのアテにしやすい
・試合ごとの得点が安定する

が挙げられるのでは。
もちろん出塁率の評価が下がることはありませんが
意外と勝てないチームで「出塁率と得点率は高いのにおかしいな」っていう場合にもしかしたら落とし穴があるかもしれないとは思います。
(ただし戦略の上では、長打重視には打線としての要素以外に欠点があるかもしれません。例えば長打力のある選手は守備が下手な傾向があるとか、年俸が高いとか)

長打の価値も見直そう、てなところで以上。






余談:今回盗塁を含めませんでしたが、システムとしてはありますので試すこと自体は可能でした。
しかし例えば青木打線に盗塁をさせるとしましょう。
その際成功率を適当に決めるわけにはいきませんので2007年青木の実際の盗塁成功率.739を設定すると
一般的にセイバーメトリクスで損益分岐点と呼ばれる7割を超えるので得点増でめでたしめでたし……
とはいきません。
打撃があまりに強力であるためにアウトの価値が高まってしまい盗塁刺の損失が非常に大きくなり、そのわりに成功の利益は伸びないので得失をプラスにするために8割を軽く超える成功率が要求されてしまうのです。
「青木が9人並んだ打線」というと打撃に加え足でかき回せる打線をイメージするかもしれませんが、走れないんですね。
同じ見方をするなら、XR27で矛盾になる部分でしょうか。
そのうち犠打や盗塁でも何か試してみたいところですが、それらは選択によって発生する要素であり、またそもそもイニングや点差を判断材料とするためになかなか難しいかなとも思います。
 また、これだけ書いておいてなんですが数字の解釈に自信があるわけじゃぁありません。同じことを言っている人も特に見たことがありませんし。
誰かが今回の争点に関して同じ手法か別の手法かを問わずバシっと答えを出してくれたら、結果的に僕の考えが間違っていたとしても、それはスッキリするので有り難い話です。




打線シミュレータスペック:
単打・二塁打・三塁打・本塁打・四死球・凡打・三振……全体の打席に対するそれらの割合に応じて結果を割り振る。
犠打の打席は無視。犠飛は凡打としてカウント。故意四球は四球から除外しない。
どの状況でも打者の打撃能力は変化しない。

走塁の設定の詳細は以下。

打線シミュレータ走塁設定


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管理者:クロスケ

野球全般好きで、プロ野球をよく見ますが特定の球団のファンではありません。
セイバーメトリクス(野球の統計的分析)の話題が多く、馴染みのない方にはわかりにくい内容があるかもしれませんがサイトに体系的にまとめています。

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