Baseball Concrete Blog

主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

2010年度総合評価 (その3)

投手の評価について、具体的に算出法をやっていきます。
基本的にはFIPの優秀さをリプレイスメント・レベルと比較して評価するというだけなのですが、投手は野手に比べて「出場する試合あたりの影響力」が大きいことを考慮に入れるために一旦「その投手が出場した試合のチームの失点期待値」を計算するような過程があり、そのあたりはちょっと「何を対象にした何を計算しているのか」がややこしいかもしれないのでご注意下さい。


算出は以下の手順で行います。

 (A) リーグのFIP定数を計算する。
 (B) 選手のPF補正FIPを計算する。
 (C) 対象の投手が登板した試合のチームの失点率を計算する。
 (D) 対象の投手が登板した試合のチームの勝率を計算する。
 (E) 対象の投手と同じ分をリプレイスメント・レベルの投手が登板した場合のチームの失点率を計算する。
 (F) 対象の投手と同じ分をリプレイスメント・レベルの投手が登板した場合のチームの勝率を計算する。
 (G) DとFの差に対象の投手の登板試合数を掛け、リプレイスメント・レベルの投手が登板する場合に比べて稼いだ勝利数を計算する。


まずはFIPの算出のためにFIPのリーグ定数(A)を求めます。通常は防御率で計算するところをここでは失点率で計算しますが、これは勝率の評価をするために失点全体を捉える必要があるためと、式の組成上自責点よりも失点で扱うほうが自然ではないかと考えるためです。

 A=失点率-(13×被本塁打+3×(与四球+与死球)-2×奪三振)/投球回 ※全てリーグ全体の数字で計算

ここから各選手のFIP、及びPF補正済みFIP(B)が算出できます。

 FIP=(13×被本塁打+3×(与四球+与死球)-2×奪三振)/投球回+A
 B=FIP+(1-PF)×リーグ失点率

さて、野手はシーズン全体にわたって満遍なく出場するということが基本ですが、投手は(先発投手は特に)全試合に出場することは無い代わりに1試合1試合での影響度が大きいと考えられます。
この点を考慮に入れるため、登板試合あたりでいかに試合を支配しているかということも反映されるように計算をしてみます。
どれだけ支配力を発揮しているかはどれだけ多くのイニングを投げているかということにより、登板あたりの平均イニング数から、その投手が登板するときのチーム全体の失点率(C)がどのようになるかを計算します。

 C={(投球回/登板試合)×B+(9-投球回/登板試合)×リーグ失点率}/9

例えば同じFIP 2.50の投手でも、平均5イニング投げるのであれば(残りのイニングを失点率が4.50の平均的な投手に任せるとして)その投手が投げる試合でのチームとしての失点(C)は3.39程度になることが期待され、平均7イニング投げる場合は2.94になります。同じ失点阻止能力でも自らの投球で試合を完成させる度合いによって影響が異なるわけです。
ここから、平均的な環境で対象の投手が登板する試合の勝率(D)を計算することができます。

 D=リーグ失点率^1.7/(リーグ失点率^1.7+C^1.7)

平均失点率が4.50、Cが3.50であれば勝率(D)は.605となります。
ここから0.5を減算すれば平均的な投手に比べての貢献の高さを計ることができますが、今回比較対象とするのはリプレイスメント・レベルです。
リプレイスメント・レベルの投手が投げる場合失点は平均に比べて37%増えることから、同じ登板機会でリプレイスメント・レベルの投手を登板させた場合のチームの失点率(E)がどうなるかを対象の投手について求めたときと同じように計算します。

 E={(投球回/登板試合)×1.37×リーグ失点率+(9-投球回/登板試合)×リーグ失点率}/9

これで、リプレイスメント・レベルの投手を登板させた場合のチームの勝率(F)が求められます。

 F=リーグ失点率^1.7/(リーグ失点率^1.7+E^1.7)

これを各投手の勝率(D)と比較することによって、同じ分をリプレイスメント・レベルの投手に投げさせる場合に比べてどれだけ勝利を増やしたかということが評価できます。それが登板試合あたりの評価ですから、最終的には登板試合数を掛けあわせることで投手よる全体の貢献(G)が計算されます。

 G(Pitching Total Win)=(D-F)×登板試合

このGがすなわち最終評価、同じ出場機会分を控えレベルの選手が出場する場合に比べて対象の選手が増やしたチームの勝利数です。

計算過程がどういう具合になるかちょっと具体例で見てみると、例えばMVPをとったソフトバンクの和田投手はPF補正済みFIPが3.57で、登板試合数は26、投球回数は169 1/3でした(試合あたり平均6.51イニング)。
するとリーグの平均失点率4.32から和田投手の登板した試合のチーム全体としての失点期待値は (6.51*3.57+(9-6.51)*4.32)/9=3.78 で、これは勝利期待値に変換すると 4.32^1.7/(4.32^1.7+3.78^1.7)=0.557 となり、平均的な守備を仮定した上では和田投手が登板する試合でチームは56%の勝率を見込めることになります。
同じ分をリプレイスメント・レベルの投手に任せたとしたらどうなるかというと、チーム全体としての失点期待値は (6.51*1.37*4.32+(9-6.51)*4.32)/9=5.48 勝利期待値は 4.32^1.7/(4.32^1.7+5.48^1.7)=0.401 と若干4割になってしまいます。
つまり一試合のレベルで見ると和田投手が登板することはリプレイスメント・レベルの場合に比べて 0.557-0.401=0.157 ほど勝利が増えることになります。
これが26試合分あるわけですから、最終的な勝利貢献値は 26*0.157=4.1 となります。
ちなみに平均的な投手と比較した場合のバリューは1.5であり、最終結果はそれを大きく上回っていることから単に失点阻止能力が優れているだけでなく多くの出場によって代替選手を出場させない貢献も反映されていることがわかります。

まぁ実際のところを言うと上記の計算は大したことはしていなくて、補正済みFIPさえあればほとんど同じように機能する「ショートカット」も紹介できます。
例えば {(1.37×リーグ失点率-FIP)/9×投球回}/10 とすれば効果はほぼ同じだと考えて差し障りありません。
しかし個人的にはもう少し丁寧に計算したほうが「面白い」と思うのです。


次回は2010年の両リーグの投手に実際に適用した結果を掲載したいと思います。


※2011.2.16 PFのところの式が間違っていたので修正しました。

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