Baseball Concrete Blog

主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

書籍:『日本ハムに学ぶ 勝てる組織づくりの教科書』

画像:勝てる組織づくりの教科書


ビジネスにも通じる! 低予算でも「負けないチーム」はできる
ダルビッシュが抜けても、ファイターズは弱くならない!
なぜドラフト1位が「斎藤佑樹」だったのか。セイバーメトリクスが解き明かす最強の方程式

ダルビッシュの移籍が取りざたされています。日本ハムにとって、ダルビッシュが移籍せずに引退までチームに残ってくれることは理想です。しかし、高額な年俸との兼ね合いから、日本ハムから移籍しなければならないケースも現実味を増しています。そんな中、2010年オフに国内FA権を取得した田中賢介とは、2億5000万円+出来高払いの3年契約という好条件で真っ先に契約を結びました。
上位を維持するためのカギとなる選手として、高い守備力を持つ田中を非常に重要視していることが、はっきり伝わってくる契約でした。
日本ハムの動向を追っていると、日本のプロ野球がこれからも面白くあり続けるためのヒントが数多く得られます。

(講談社BOOK倶楽部より)




SMR Baseball Labの主催でもあるデータスタジアム株式会社の岡田友輔さんの著作。
セイバーメトリクスを用いてプロ野球の戦略的なチーム編成についての考察を展開している一冊です。
指標の計算法など技術的な話に終始するのではなくあくまで野球を戦略的に考えるという観点が一貫しており、ひとつの目玉となっている「日本ハムの強さの謎の解明」などがこれまでにない視点で語られていて面白いです。

これまで巷で流れてきたある種中途半端なセイバーメトリクスの話では、納得できない人も多かったと思います。
「セイバーメトリクスといえばまずはOPS。投手はWHIP、あるいはDIPS。ちなみにOPSにはGPAという改良版があって……」などといきなり言われても、その数字の持つ意義はよくわからず「色々ややこしい数字を計算して、だから何なんだ」と思ってしまうでしょう。
しかしその点本書では、あくまでも目的はチームを強くすることであり、統計データを用いた分析は現状を定量的に把握し問題点をあぶりだして最終的に合理的な解決策を導き出すための手段(ツール)であるということがよく伝わる構成になっています。

BABIPなど深入りすると面倒になる問題は少し避けているようにも感じますが使用されている数値について説明はされていますし、全ての解析の基本・度量衡となり得る得点期待値について説明の分量を割いている点は好感が持てます。
また、DERのイメージ図(p.50)や失点要因の分解図(p.139)などは優れもので、算出の方法を厳密に把握はしなくても解析の中身がわかるようになっています。

これまで断片的にしか伝わらないことの多かったセイバーメトリクスの知見についてその足りない部分を埋めて意義を伝える一冊だと思いますし、本書で提示されている各チームの戦力のポイントや課題などについても納得できる点は多いです。
考え方自体は普遍的ですが基本的に2010オフ現在のデータを対象として議論が展開されておりますので興味がおありの方は機を逃さないうちに読まれることをオススメします。

ちなみに……帯には「ビジネスにも通じる!」と書かれていますが本文には直接にビジネスに絡めた記述はありません(その意味では純粋な野球ファンが安心して購入できます)。
とはいえ実際にセイバーメトリクスの考え方全般は広く利用価値のあるものだと思います。何らかの方法で事象を定量的に測定・可視化して、単位を変換するなどして様々に比較を行い、問題点を具体的に把握し、有効性をシミュレーションしつつ解決策を出していく。これはあらゆる場面で通用するやり方でしょう。
私は自分の責任でビジネスをやったことなどありませんので偉そうなことは言えませんが、経営学専攻であり、大学に入った当初「なんでもいいから好きなことについてプレゼンしろ」と言われたときに真っ先に『マネー・ボール』についてプレゼンをした思い出があります。そのとき教授は「これは経営学そのものだよな」と言っていたので、まぁ強引に言うととりあえずそういうことでよろしいのではないかと思います。
「セイバーメトリクス経営学」とか「もし中小企業の管理職がマイケル・ルイスの『マネー・ボール』を読んだら」とか今ならリアルにあり得そうですね。余談でした。


目次

第1章 パ・リーグを面白くした日本ハム
第2章 セ・リーグは巨人、パ・リーグは西武
第3章 得失点換算で見えてくる真のチーム力
第4章 こうすればセ・リーグは混戦になる!




コメント

わざわざ書評を書いて頂いてありがとうございます。
アマゾンのレビューにそのまま載せたいくらい
こちらの意図をくみ取って頂けてありがたいです。

引き続きよろしくお願いいたします。

>岡田さん

言ってしまえば身内なので、いやらしく見えていなければいいんですけどね。
読んでいるときの頭の中の空気というか、雰囲気が『マネー・ボール』のような感じがあってそれがとても好きでした。刺激される面も多いです。
最終的な解釈や意見は若干違うところなども当然ありますので機会があればそのあたりで議論も広げていけたら面白いと考えています(漠然とですが)。

そうそう、あとp.161に出ている【投球による1打席あたりの獲得得点価値の算出式】ってBaseball Lal内で明示されたことありましたかね?
あれって分母をイニングにしてイベントの係数出すときにアウトからInning Ending Valueを除けば(あるいは最後に平均失点率を足せば)完全に日本版DIPS(3.0?)になりますよね。
個人的にはそれが是非見たいですし、仮にBaseball LabでWARを算出するとしたら大きな武器になり得るのではないかと思います。

内容に関してはまだまだ叩き段階のものもあるので精度を上げていきたいですね。

>そうそう、あとp.161に出ている【投球による1打席あたりの獲得得点価値の算出式】って
>Baseball Lal内で明示されたことありましたかね?
>あれって分母をイニングにしてイベントの係数出すときにアウトからInning Ending Valueを除け
>ば(あるいは最後に平均失点率を足せば)完全に日本版DIPS(3.0?)になりますよね。

もう少し数字の検証を続けたいところですが、
日本版DIPS(3.0)になりますね。
私個人だとかなり不安なのでこの辺は皆さんと検証を進めたいですね。
WAR算出(こちらのサイトでだいぶ進んでますが)するのにもこちらも考慮した方が良いですもんね。

>岡田さん

わざわざお越しいただいている感じですみません。
DIPSについては真剣に検討したいので考えをまとめてメールを差し上げたいと思います。私としても他の方のご意見を伺ってみたいです。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://bbalone.blog119.fc2.com/tb.php/488-8004cba0

 | HOME | 

プロフィール

管理者:クロスケ

野球全般好きで、プロ野球をよく見ますが特定の球団のファンではありません。
セイバーメトリクス(野球の統計的分析)の話題が多く、馴染みのない方にはわかりにくい内容があるかもしれませんがサイトに体系的にまとめています。

Baseball Concrete



RSSフィード

最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

月別アーカイブ