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主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

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セイバーメトリクスQ&A (2)

前回の記事でセイバーメトリクスに関する疑問・質問を募集して、幸いなことにいくつか頂戴することができましたので、そのうちの一部に自分なりの回答を書いてみます(今回お答えできていないものもありますがいずれ書くつもりです)。

自分から呼びかけておいてなかなか時間がとれなくてレスポンスが遅く、申し訳ありません。前回同様、回答は私個人の考えによるものであり、セイバーメトリクス界の一般的な合意を代表するものではなく、また指標の考案者の意見を必ずしも反映するものではありません。セイバーメトリクスに詳しい方からの「いや、それはもっとこういう説明のほうが適切だ」というツッコミに関しても歓迎いたします。私がエラソーに知識を披露することではなく、セイバーに対する理解が広まることを目的としておりますので。



Q.盗塁成功率は何%くらいで損得が釣り合うのか?

A.全体的には70%程度ですが、ケースバイケースです。
MLBの研究では盗塁成功の得点価値は+0.19、失敗の価値は-0.44とされています。
損益がゼロとなる成功率をPと置いて方程式を立てると 0.19*P-0.44*(1-P)=0 であり、これを解くとP=0.698413。ほぼ70%です。
しかしこの得点価値はあくまで「一般的な」値、さまざまな状況での盗塁があり得る中でのいわば出現頻度に応じた加重平均値です。
例えば同じ二盗でも無死から走るのか一死から走るのか、2得点以上を期待したいのかそうでないのかによって実際には基準は変わってきます。
それらは得点期待値等を使って計算することが可能であり、SMR Baseball Labのコラム「盗塁の損益分岐」に詳しいのでご参照下さい。



Q.「9回を任せるクロ―ザーよりも、7回や8回のセットアッパーの方が大事」という説の根拠は?

A.試合における局面の影響度ではないでしょうか。鍵となる概念は、試合の局面ごとに見込まれるチームの勝利確率です。
結論から簡潔に言いますと、9回の守備の時点で一定のリードがあると、勝利確率的にはほぼ試合が「決まっている」ことが数理的な研究から明らかになっています。したがって、そこで優秀な投手を出そうがそうでない投手を出そうがその影響は(相対的に)小さいということになります。

米国で著名なセイバーメトリシャンTom Tangoらの『THE BOOK』は、リードした9回で平均的な投手に対して優秀な投手を出すことがどれだけチームの勝利確率を改善するかという計算を行っています。
まず、3点リードで9回の守備を迎えた場合、平均的な投手が投げたとしても守備側のチームが逆転されて負ける確率は4.2%しかありません。ここから平均的な投手に代えて優秀な救援投手を登板させても負ける確率は2.1%で、その有効性は2.1%ということになります。得られる勝利数の期待値に直せば、3点リードの9回に優秀な投手を起用することで得られる(追加的な)勝利数は0.021勝だと表現できます。
これを2点リード、1点リード、そして8回から優秀な投手を登板させた場合の1イニングあたりの数字まで範囲を拡大して見てみると、それぞれの局面での「優秀な投手を投げさせることによる効果」は以下の表のようになります。

イニング 1点リード 2点リード 3点リード
9回    0.063   0.038   0.021
8回    0.047   0.034   0.022

ご覧いただければわかる通り、9回はやはり重要なのですが、3点リードの9回に良い投手を注ぎ込むのであれば1・2点リードの8回に投入したほうが効果は大きい、ということが示されています。
局面の重要性と救援投手の問題についてはこのような見方だけでなく様々な論者が様々なことを言っていると思うので一概にこうとは言えませんが、セイバーメトリクス的にこの論点を見たときに重要なのは、9回は確かに大事だけれども7回や8回も同様かそれ以上に重要な場合も多いのであって「リリーフエースは9回のリードした場面で投入するもの」といった硬直的な考えを持つのは問題ではなかろうか、という視点を持つことではないかと思います。
一般的に言って、9回は競っているときには1プレーの重みが極めて大きいのですが、点差が開いているときには逆に物凄く小さくなり、その振れ幅が大きいことが特徴のようです。
「野球は9回2アウトから」とは言っても、やはり点差があってあと1アウトでゲームセットなら確率は低いよね、ということを統計は冷静に扱います。



Q.セイバーメトリクスで進塁打というのは評価されるのか?

A.評価される指標もあればされない指標もあります。
はぐらかした答えのようにお感じになるかもしれませんが、一口にセイバーメトリクスといっても野球の世界を計数的に捉えようというテーマの中で様々な試みがあり、目的も多様です。目的が違えば合理的な方法も異なり、違うやり方でもそれぞれに適切な評価となります。まずこの点をおさえていただきたいと思います。

セイバーメトリクス的に言うと進塁打については状況に依存する結果であるという点がその性格上重要なところで、これをどう考えるかで進塁打に対する態度が変わってきます。
セイバーメトリクスで一般的に打者を評価する場合(具体的にはRCやOPSとお考え下さい)、打者が打席に入ったときの状況がどのようなものだったかに影響を受けないよう安打や四球など単体の結果で評価をすることになっています。打点がついたかどうかなどは、同じ打撃内容でも打席に入ったときの状況によって大きく影響されるものであり個々の打者同士を比較するには不公平になるという考えです。
進塁打も打者が打席に入ったときに走者がいるからこそ打てるものであり、走者がいるかどうかはその打者の問題ではありませんから凡打が進塁打かどうか、ということは基本的には考慮されません。凡打は凡打と扱われます。
セイバーメトリクスの打者評価といえばRC系が多いことを考えると、セイバーメトリクスは基本的には進塁打を評価しない、というのが雑に言ったときのご質問への答えになります。

一方で、要因ともかくとしてその状況そのものの変動、それがもたらす勝利への影響を捉えることを重視する指標もあります。代表的なものがWPAと呼ばれる、打席の前後で確率論的に計算される「チームの勝利確率」がどのように変動したかを計測するものです。
例えば打者が無死一塁で打席に入った場合、RCで評価をするならば、走者を進塁させないフライに倒れようが、進塁打を打とうが評価は変わりません。
一方WPAでは局面の変化が重要で、後者のほうが当然チームにとっては好ましい状況であるため、走者を進めないよりはプラス評価されることになります。
WPAはプレーの価値を平均化して「その瞬間の試合の動き」を排除したRCなどに比べて試合のダイナミズムを描写するものとして広く用いられる指標であり、この意味ではセイバーメトリクスには進塁打の価値を包括する評価がしっかりと存在し親しまれている、と言えます。
なおWPAとRCは最初に申し上げたように目的が異なるものであり、どちらが優秀というものではありません。

コメント

「9回を任せるクロ―ザーよりも、7回や8回のセットアッパーの方が大事」についてですが、1点差の9回の出現確率はどのくらいで、そこに優秀な投手を起用するのは理にかなっているのでしょうか。リリーフの消耗の仕方なんかが詳しく分かればセイバー的にはまだまだ投手起用法が改善できそうな気がしています。

下の記事はTHE BOOKの何ページに記述されているのでしょうか
気になるので読み直してみようと思います


米国で著名なセイバーメトリシャンTom Tangoらの『THE BOOK』は、リードした9回で平均的な投手に対して優秀な投手を出すことがどれだけチームの勝利確率を改善するかという計算を行っています。
まず、3点リードで9回の守備を迎えた場合、平均的な投手が投げたとしても守備側のチームが逆転されて負ける確率は4.2%しかありません。

>名無しさん

勝利確率を基に「その局面がどれだけ勝利確率が変動しやすい重要な局面か」を指標化したLeverage Indexというものがあります。
それ自体の技術的な説明からしないとならないので今回のQ&Aではあえて述べなかったのですが、リリーフの起用問題は理論的には局面ごとのLeverage Indexの高さと出現確率の多さに集約されるのかもしれませんね。
ただし、現実にはフィジカルな要素が絡むだけでなく出現確率は先発投手は誰か相手打線はどこかといった個別的なファクターに影響される割合が大きくて平均的な数値を求めてもあまり意味がないかなとも思います。あまり細かいレベルで「これは適切だけどこれは不適切」といった判断をするのは難しいような。
データ自体はBPあたりで調べればわかりそうですが。


>まっくらさん

ペーパーブックではp.208からの"Leveraging Relievers"に記述されています。

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野球全般好きで、プロ野球をよく見ますが特定の球団のファンではありません。
セイバーメトリクス(野球の統計的分析)の話題が多く、馴染みのない方にはわかりにくい内容があるかもしれませんがサイトに体系的にまとめています。

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