Baseball Concrete Blog

主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

『セイバーメトリクス・マガジン2』告知


『セイバーメトリクス・マガジン』が今年も出ました。
電子書籍で700円と、提供側が言うのもなんですがお得なお値段となっております。

電子書籍には馴染みのない方も多いかと思いますが、下手にリアル本を書店で探し回るより入手しやすかったりしますので、この機会にご検討いただければ幸いです(購入すると、いわゆる電子書籍用フォーマットのほかPDF形式のファイルもついてくるようです。)。


守備特集!

内容ですが、今年は守備特集。シーズンの振り返りとコラム、という昨年の構成とは趣が変わり、守備に焦点を当てた一冊となっています。複数の分析家が分担して、守備位置ごとに分析記事を書いています。最終的にアワードとして、各分析者の評価を総合して守備位置ごとの優秀者(ランキング)が出されています。

私(蛭川)は特集では二塁手の記事を担当しました。内容的にはUZRのPF補正を試みたり、最終的にUZR何点というだけでなく守備範囲を細かく見てどこに強み・弱みがあるのかといった点を分析しています。

守備の貢献度が具体的な点数で出るようになったというのはセイバーメトリクスによる守備評価の画期的なところですが、UZRという「ゾーン(グラウンド上のどこにどんな打球が飛んだか)」の情報を使った手法であることによって守備範囲の中身まで見ることができるというのは改めてすごいことだと思います。もちろん私の記事だけでなく、他の守備位置の分析でも守備のさまざまな中身に踏み込んだ内容となっています。


WARで投資効率を考える

守備企画以外にもコラムやデータが豊富に掲載されていて、私はWARで投資効率を考える内容のコラムをひとつ書いています。

総合指標であるWARと年俸を対比させると、端的に投資に対してどれだけの成果を上げることができたのかが浮かび上がってきます。単純に「この選手は年俸が低いのに活躍したから得をしたな」と考えるのも楽しいですし、それだけでなく全体的な傾向を見ていくことによってプロ野球の構造としてどういう部分にどういう要因で過大評価・過小評価が生まれているのかを考えることもできます。

例えば、打撃なんかは(セイバーメトリクスがどうとか言わなくても)比較的数字ではっきりと成果が確認しやすい部分です。ですので、打撃の優劣に関しては数字が年俸に反映されやすいと思われます。

一方で、守備に関しては、重要性が叫ばれながらもその評価はうやむやになっている印象があります。明らかな守備の名手がいるとして、それは打撃でいう3割30本の価値があるのかどうか? 2割8分20本程度なのか? あるいは、三塁手を無難にこなすのと遊撃手を無難にこなすのとで、チームへの貢献度は違うのか(違うとすればどのくらい)?

本来きちんと年俸を査定する上ではこういったことを明確にすべきでしょうが、これまでは明確にする方法がなく難しいところだった、という部分があると思います。

守備位置を横断的に評価するWARは、完璧と言えることはないにしろ、上記のような事柄について検証可能で合理的な尺度を提供します。それにより、勝利に対する貢献度と比較して投資額が適正かどうかというのをある程度浮かび上がらせることができます。

少し長くなりましたが、このあたりがそもそもの前提としてWARで投資効率を考えていくことの意義です。分析を行ってみて実際どういう示唆が得られるのかについては本編で。

ついでに、中日の落合GMがバッサバッサと切っている様子が連日報道されていますが、このあたりについても数字的に背景を抑えておくとよりニュースが楽しめるのではないかな、と思います。


ホット&コールド

以下は余談で単なる個人的なつぶやきですが、日本シリーズの田中投手「酷使」問題や落合GMの減俸の嵐の話を見ていると、改めて、一種の「構え」としてのセイバーメトリクスの意義を感じているところです。

簡潔な言葉でうまく表現できないのですが、感情とデータは排他的ではないだけでなく、データで気付きを得ることによってさらに情感豊かに野球を楽しむことができるのではないかということを最近特に考えます。

データの分析に関して、人は心を持っているからただ数字を押し付けてもダメだ、という反感はありがちですし、実際、真理だと思います。例えば、私のようなセイバーメトリクス好きが指標を使ってポンと「あなたの適正年俸は○○円です」と言ったとしても「お前に何がわかる」と言われて終わりでしょう。

しかし、チームに貢献してきたベテラン選手の減俸といったそのままでは感情的に受け入れ難い意思決定こそ、出来る限り数字を詰めることで納得ができるようになるのではないでしょうか。「あなたのチームへの過去の貢献には感謝しているが、これこれこういう筋道で客観的に現在の貢献度を考えると、球団としてはここまでの金額しか出せない」と。

気持ちが大事だからといって気持ちだけで話をしても、話が平行線となりむしろお互いの心を傷つける場合もあると思うのです。それに対して客観的に納得できる根拠が示されれば、お互いの立場を尊重しながら感情に折り合いをつけて話をしていくことができるかもしれません(落合GMに関しても、人物としての存在感だけでなく、過去の行動を含めて周囲が彼に何らかの「筋が通っている感じ」を持っているからこそ今回のようなことが可能なのではと感じます)。

酷使の問題についても深い思索で情感にも溢れた熱い論評がさまざまに流れています。しかしこれも、主観的な価値観で議論をしてもなかなか水掛け論以上のところに進まない難しさがあります。

ここにデータを使った分析を持ち込むと、検証可能な材料(あるいは考え方の枠組み)を提供するという意味で役に立ちます。例えば、球数を負担の指標としてどう負担を割り振れば投手の生涯でのWARが最大化されるか、など問題を具体的に定式化できますし、手間さえかければ計測(推測)可能かもしれません。

その分析結果を「答え」として押し付けるという意味ではなく、異なる人々がそれぞれに異なる価値観を持ちながらも有意義に対話をしていく手がかりになるのではないかということです。

データという一見すれば冷たい観点からの議論は熱い感情論をただ否定するものではありませんし、むしろ一旦冷静な思考を持つことによって、人間のホットな部分をより大事にすることができるのではないか。それを支援するのが(複雑な計算をするかは単なる手段の問題で)構えとしてのセイバーメトリクスでは、と。

本書『セイバーメトリクス・マガジン2』の中でアナリストの三宅さんがカーネマンの『ファスト&スロー』に触れていますが、主観の思い込みから逃れるヒントだけでなく、「熱く、かつ冷静に」野球と向き合うヒントも本書に隠れているかもしれません。



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野球全般好きで、プロ野球をよく見ますが特定の球団のファンではありません。
セイバーメトリクス(野球の統計的分析)の話題が多く、馴染みのない方にはわかりにくい内容があるかもしれませんがサイトに体系的にまとめています。

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