Baseball Concrete Blog

主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

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外野守備における脚力の重要性

阪神の城島選手が外野守備の練習をしたことが報じられています。

阪神・城島が志願!外野もやる

本気かよ?というのはさておき、練習の動きを見たコーチの感想は、スタートなど動きがよくセンスがあるが「守備範囲は足の速さの通り」とのこと。
これ、セイバーメトリクス的には気になるところですね。
何故なら、セイバーメトリクスによって研究が進んでいる守備指標の結果を見ると、守備の良し悪しは単純な身体能力(特に外野守備であれば若さ・脚力)とかなり相関が強いように思われるからです。
つまり、グラブ捌きがいいなどの技術があっても、なんだかんだ言って奪ったアウトの多さを見れば足の速い選手が優秀で、そうでない選手は劣る傾向が強いということです(ただし、この傾向そのものについてはNPBでのデータ不足もあり私自身「脚力」と「守備範囲」をきちんと定義して調査はできていないのですが)。
どうも世間的な評価では、見た目の動きがとりあえず滑らかであれば「アウトを奪う頻度が少ない」という事実は見過ごされがちな傾向にあるようです。失策でなければ「野手が捕れなかった」というよりとりあえずは「ヒットを打たれた」となりますし。

ここで、外野守備における脚力の重要度を小学校の算数で考えてみます。本質的な図式を抽出するために物事を単純化しますがご了承を。
まず、脚力があるというのは足が速いということです。速いというのは、単位時間あたりに長い距離を移動できるということです(速さ=距離÷時間)。
そして守備範囲というものを打球が放たれてから落下までの時間で野手が移動できる範囲として、野手はどの方向へも一定の速度で移動できるとすると、守備範囲は脚力に依存する野手の(打球発生から落下までの間の)移動距離を半径とした円になります。
足が速いというのは要するに守備範囲である円の半径が長いということです。

そして円の面積はお馴染み「半径×半径×円周率」の式で求められます。
このことからわかる重要な点は、守備範囲は足の速さに単純に比例するのではなく、足の速さの二乗に比例するということです。
つまり、足が2倍速くなると守備範囲は2倍どころか4倍になります。足の速さの違いは守備範囲の広さには増幅されて反映されるわけです。
実際には前方に向かって走るときに比べて背走のときの速度は遅いといった違いがありますので守備範囲の形はきれいな円ではないと思いますが、その形がおよそ各選手について相似であれば、脚力の変化と守備範囲の変化との関係については同じ理屈が適用できます。

仮に打球の発生から落下までの間に移動できる距離(円の半径)が10の選手がいたとすれば、その選手の守備範囲の広さは314です。
これに対して移動距離(半径)が9の選手を考えてみると、10の選手との脚力の差はたかが0.9倍であり、普通に観察している分には見た目にはそれほどの差がないように思えるかもしれません。
しかし守備範囲を計算すると254で、314の0.81倍です。
もしこのことを脚力10の選手の0.81倍しかアウトが取れないと単純に考えるなら、脚力10の選手が年間に200のアウトを取るとした場合、獲得するアウト数には38もの差が生じます(言い方を換えると、それだけアウトにできた打球をヒットにしてしまうということです)。1つヒットが増えることに0.8点の価値があるとすると32点の失点増加であり、これは相当な数字です。

もちろん打球反応が良い、スタートが速いということも時間を長く使えるので足が速くなるのと同じように有効ではあるのですが、少なくともプロのレベルにおいてその部分の差は、移動距離が長くなって脚力による差がつきやすくなる外野守備の中で脚力の不利さを容易に覆すほど重要ではないのではないかと思います。
実際には脚力も今回計算したような単純な形で守備範囲に跳ね返るわけではないと思いますが、脚力の差が見た目にそれほど大きくなく重要でないように見えても守備範囲には思ったより大きな差があるかもしれないということです。
セイバーメトリクス的には、動きにセンスがあるからといっても、足が速くない選手に外野手をさせるのはおすすめできません(あくまで守備の話なので、守備のマイナスは承知した上で打撃で取り返せるから、といった判断は別の話です)。


捕手守備得点(2011年)

非常に今更で中途半端ですが、例年のように捕手の守備指標を算出したので載せます。
計算には守備イニング数が必要となりますが使用したイニング数は実際のデータではなく刺殺数に基づいてチームの捕手内で分配したもので、その推計守備イニングで300イニング以上の捕手を対象に掲載します。
(他の守備位置について算出しないのか、というのはとりあえず聞かないで下さい)

捕手の守備得点は、許盗塁・盗塁刺・捕逸・失策の多さをリーグの平均的な捕手と対比してそれに各事象に見合う得点の価値を加重したもので、「同じイニング数をリーグの平均的な捕手が守る場合に比べて何点分チームの失点を減らしたか」を表します。

過去数年のデータ:捕手守備評価



年度チーム選手試合数盗塁阻止捕逸失策守備得点
2011 F大野 奨太101 4.0 -0.1 1.6 5.4
2011 M里崎 智也104 1.6 1.0 0.7 3.3
2011 L銀仁朗122 3.5 0.0 -0.9 2.6
2011 F鶴岡 慎也75 1.6 -0.4 1.5 2.6
2011 Bs伊藤 光65 2.5 0.0 -0.8 1.6
2011 H細川 亨95 -1.5 0.3 2.5 1.3
2011 E嶋 基宏126 -0.2 -0.2 -1.8 -2.1
2011 H山崎 勝己86 -4.4 0.9 -1.0 -4.5
2011 Bs鈴木 郁洋89 -4.3 0.0 -0.7 -4.9



年度チーム選手試合数盗塁阻止捕逸失策守備得点
2011 G阿部 慎之助112 1.8 0.5 0.8 3.0
2011 T藤井 彰人98 0.8 0.8 0.4 2.0
2011 D谷繁 元信100 -0.2 0.7 0.8 1.4
2011 T城島 健司38 2.1 -0.6 -0.4 1.1
2011 S相川 亮二125 2.1 0.9 -2.1 1.0
2011 C石原 慶幸106 -0.3 -0.2 1.1 0.6
2011 B黒羽根 利規44 0.0 0.2 -0.9 -0.7
2011 C倉 義和51 -0.8 -1.2 0.6 -1.3
2011 B細山田 武史84 -3.1 0.1 0.9 -2.1



パ・リーグは適度に偏差がありますが(大野捕手の1位は初)セ・リーグは捕手の守備による差が非常に小さいシーズンだったようです。このシステムの癖もあると思いますが。


Getting defensive (THT)


Getting defensive (THT)

最近THTの新しい記事を追えていなかったのですが
Tangotigerがwell-writtenと評しているので読んでみると本当にwell-written。

打撃の評価は簡単で、投手の評価も比較的簡単なのに、守備の評価はやたらに難しい。
これはなんなんだ、ということで、学説史的にさまざまな指標を紹介しつつ要点をサマライズしています。
守備率を除いて最初に出てきたのはRange Factorなど個別の要素を踏まえない総計のデータ(補殺とかが該当)による指標で、その後ひとつひとつの打球の内容を集計するというZone Ratingが出てきた、というところまではまぁお馴染みの説明。
そしてそこからUZRなどの指標にも疑問はあるんじゃないのかということを掘り下げ、興味深いことにUZR以後に開発された守備指標のいくつかはデータの細かさという意味では後退している(あえてそういうものを開発している)、ということに注目しています。
集められた「詳細なデータ」に問題が含まれていることが考えられるならむしろ、長期的にデータを扱うことを覚悟すれば一般的な総計データのほうが客観的で有用なのではないかという観点でしょう。
しかしまた、そうは言ってもそれってどうなん、ということでさらに上の次元としてFieldf/xがもたらす革新の可能性に言及しています。


ちなみに冒頭のあたりに「私たちが本当に知りたいことは、(守備の)機会に対して誰が最も多くのプレーを成立させたかということだけである。問題は、いくつの守備プレーを成立させたかはわかるのに選手個々の機会の正確な測定ができないことだ」みたいなことが書いてあるのですがこれは本当に守備指標について語るときにまず認識しておくべき問いだと思います。打率の計算に喩えて言えば、安打数はわかるのに打数がわからないという状況に置かれている。

この前Baseball Labに守備指標の記事を書いたとき、指標の説明に関して「BIPを使用するとRFの欠点が改善される、ゴロ/フライも考慮することでさらに精度アップ」といった「RFからの改善」の視点に重点を置いて書こうかとも考えたのですが、結局のところそれは手段の問題であり、より根本的に重要なのは守備において利得が生まれる構造だと考えてどちらかと言えばそちらを尊重する書き方にしました。
その意味をわかりやすく説明できたとは言い難いし、結果として、完成した指標によってRFの問題点がどのように解決したのかという部分もわかりにくくなってしまったのですが、まぁこれはこれでひとつの筋なのではないかと考えております。

なお一応言っておくと、守備機会の推定でBIP(インプレー打球)をベースとすることによって「投手の奪三振能力に左右される」という欠点を埋め、被安打の概念も導入。さらに内野手はゴロ・外野手はフライに対象打球を絞ることによりゴロ/フライ傾向の偏りに対応、かつそれは直接集計されたデータなので推定をして計算するRRFよりも精度が高いはずだし何より筋道が通ります。右/左補正に関しては本質的にはRRFと相違なし。
そんなこんなで全体的にはRRFよりもすっきりして良いのではないかと考えておりますがまぁその辺の最終的な判断は指標を利用するみなさんにお任せします。

THTの記事の話に戻りますが、引用も豊富で勉強になりますよね。保存版の記事かもしれません。
こんなこと言及する必要もないんでしょうが、出している情報の少なくとも3倍や5倍は知識を持ってないとこれだけ書けないだろうから素直に尊敬するなぁと思ったり。

日本版UZR(2009)


日本版Ultimate Zone Rating(UZR)プロトタイプ (Baseball Lab)

日本では今まで出てこなかったUZR、今年の分の集計はまだのようですが、コンセプトの説明と2009年のポジションごとの成績が公開されています。
アジャストメントの類もMLBで発表されているものに比べるとまだ整備されていないところもあるようですが日本でゾーンのデータが見られるのなんて10年先かもと思っていたところもあるので、それが出ているだけでも素晴らしいと言うべきでしょう。

ちなみに、仮に今後日本でゾーンのデータが完備されても当方がサイトで出しているようなレンジの数字の公開も当面は続けたいと思っています。私としては、性質の違いもさることながらできるだけ公式記録から「誰でも計算して確認できる」数字があることも大事だと思っているので。まぁ、基本的に有用性はゾーンですけど。

MLB・プラスマイナスシステムの数字

以前から成長が激しいFanGraphsが数日前にまたクレイジーな仕事をしてくれたので
忘れないうちに紹介しておきます。

その仕事というのは選手の成績ページにプラスマイナスシステム(Defensive Runs Saved)の数字を追加したこと。
元々掲載していたUZRにとって代わったのではなくて、両取りです。
両者に比べれば簡易版ですが人気のあるRZRなども掲載していて、なんというかまぁ単純に素晴らしいと言えるでしょう。
イチローや松井秀喜の数字など、UZRと比べるとなかなか面白いですよ。

そんなこんなで早速UZRとDRSの数字の全体的な比較なども行われているようです。
そしてこれはかねてから報告されているように、確かによく相関していると見ることができるのですが
例えば相関係数で表すと0.8前後になり、「ゾーンシステムを導入すれば守備力の実態の答えに確実に到達することができる」とか考えるにはちょっと変なのも事実です。
数字に多少の違いが見られる理由はいくつか考えられますが、いずれにせよ、ゾーンだからすぐ確定した答えが出るとは考えないほうがいいことは言えるでしょう。
UZR開発者のMGLは最近ブログの読者から改善のためのアイデアを募集していましたし、現段階でかなり説得力の高い指標ではありますがまだ試行錯誤は続いてくようです(頭が下がります)。

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管理者:クロスケ

野球全般好きで、プロ野球をよく見ますが特定の球団のファンではありません。
セイバーメトリクス(野球の統計的分析)の話題が多く、馴染みのない方にはわかりにくい内容があるかもしれませんがサイトに体系的にまとめています。

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