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Baseball Concrete Blog

主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

MLB・プラスマイナスシステムの数字

以前から成長が激しいFanGraphsが数日前にまたクレイジーな仕事をしてくれたので
忘れないうちに紹介しておきます。

その仕事というのは選手の成績ページにプラスマイナスシステム(Defensive Runs Saved)の数字を追加したこと。
元々掲載していたUZRにとって代わったのではなくて、両取りです。
両者に比べれば簡易版ですが人気のあるRZRなども掲載していて、なんというかまぁ単純に素晴らしいと言えるでしょう。
イチローや松井秀喜の数字など、UZRと比べるとなかなか面白いですよ。

そんなこんなで早速UZRとDRSの数字の全体的な比較なども行われているようです。
そしてこれはかねてから報告されているように、確かによく相関していると見ることができるのですが
例えば相関係数で表すと0.8前後になり、「ゾーンシステムを導入すれば守備力の実態の答えに確実に到達することができる」とか考えるにはちょっと変なのも事実です。
数字に多少の違いが見られる理由はいくつか考えられますが、いずれにせよ、ゾーンだからすぐ確定した答えが出るとは考えないほうがいいことは言えるでしょう。
UZR開発者のMGLは最近ブログの読者から改善のためのアイデアを募集していましたし、現段階でかなり説得力の高い指標ではありますがまだ試行錯誤は続いてくようです(頭が下がります)。

RF関連のつぶやき

セイバーメトリクスに関連する用語で検索したりして勉強をしていると、さまざまな言説を目にすることができます。
その中で守備指標に関して時々気になるなぁと思うことがあるので、自分なりの見解を書いておきたいと思います。
他の方の活動を否定するものではなくて、自分の捉え方ですので、悪しからず。




・RFは遊撃手と外野手(特に中堅手)以外はアテにならない

これはこちらのコラムなどで見ることができる意見でwikipediaなんかにも引用されていますが、私はそうは思いません。
単純に自分で打球を処理する以外のコンビネーションのプレーが多くなると(内野手であれば基本的には補殺に対して刺殺が多くなると)守備力の評価としてはノイズが入りがちになると思われます。
これは一塁手と二塁手なんかに見られる状況であり、たしかに相対的には信頼度は下がると考えられるかもしれませんが
元々対象にとることを想定されていない一塁手は別として、三塁はこの意味ではむしろ遊撃よりも信頼度が高いと考えられますし、二塁もやや低いにしても遊撃の場合と比べて急に使えなくなるとは思いません。
コンバートの互換性などを見てもそこまで異なる質のプレーが行われるわけではないでしょう。実際、信頼度が高い守備指標とされるUZRと各守備位置のRFの相関では、三塁手は遊撃手より強く結びついています(FanGraphsから直近3年分のQualifiedリスト使用)し、二塁はやや低いですが遊撃は良くて二塁はダメと結論できるようなものではありません。外野では中堅よりも両翼のほうが高い相関となっています。
年度ごとの再現性も、ここから少し推し量れると思います。
NPBとMLBは違いますがNPBのデータからも特段遊撃手と中堅手以外アテにならないことを示すデータは私は得ていません。補正をしてサンプル数を確保していくとすれば、投手と捕手以外についてはそう格差はなく参考になるレンジの指標が得られるのではないかと思います。Hardball Timesなどにこの手の研究は結構あります。



・RRFはタイロン・ウッズの評価が高くなるような指標だから信頼できない

別に通常なら気にするレベルにない言説なんですが
これってなんか私のサイトのせいな気がするんで……。
前述の内容ともちょっと関連してきますが、この種の言説には主に3つの疑問があります。

a.選手のデータを恣意的に切り取っていること
別に私のサイトとは関係ないのかもしれませんが、当方のサイトに掲載している限りとしてウッズのRRFが良いのは2008年だけであって他は全てマイナス。長期的スパンで見ればRRFがウッズの守備を高く評価しているという事実の認識自体正しいとは言えません。で、サンプル数に注意が必要なことは例えばページ内に書いています。
>偶然の打球分布の影響などを考えるとRRFでそもそもの対象になっている遊撃手ですらフルイニング出場でも1年では足りませんし、プレーの絶対数が少ない一塁手や三塁手は尚更の話です。できれば数年の推移を見守りたいところ。

b.少数のサンプル、特定の守備位置で全体を語ろうとしていること
ウッズのサンプルというのはRRFの対象となる守備者のほんの一部にすぎず、またRRFはそもそもは遊撃手用の式であって、一塁手は補殺のみを対象として出されていて対象となるプレー数が少ないことも合わせて他の守備位置の数字に比べて信頼度が低いと言えます(このことも前から書いています)。
ですから、仮にRRFによるウッズの評価が間違っているとしても他の守備者、他の守備位置のRRF評価がどうかはわからないということです。

c.そもそもウッズの数値が高かったらRRFが信頼できなくなる理由の論証がないこと
例えば2008年のウッズは実際に頑張っており、イメージの側が間違っている可能性です。まぁウッズの場合についてはそんなわけないと言っちゃってもいいような気はしますが、これはRFが評価されるときにいつもつきまとう問題です。

このようなネタが流通する元々の意図としてあるいは「象徴的な例としてウッズの数字があり、他にも色々おかしい」ということがあるかもしれませんが
繰り返しますがウッズの数字の認識自体どうなんだろうと思いますし、個人的にはRRFはサンプル数が確保できれば多少の参考にはなる指標だと考えています(このことについてはこの前コラムに書いたばかり)。
ウッズ云々はまともに押している論者がいるわけではなくて私がたまたま見つけたものに過敏に反応しているだけだと思います。とはいえ守備指標への批判って結構この「型」に沿ったものがあるわけで。

守備は数字で評価できないと思っている人に無理に指標を売り込もうという気は私にはありません。
ただ中立的でこういう議論にいくらかの興味を持ってくれる人が一方の意見だけを見て「あら、そうなの」と思ってしまうと何かもったいないような気がするので、もう一方の意見もあることを事実として書いておきたいと思うわけです。


なにか他にも書こうと思っていましたが疲れたのでこの辺で……。

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管理者:クロスケ

野球全般好きで、プロ野球をよく見ますが特定の球団のファンではありません。
セイバーメトリクス(野球の統計的分析)の話題が多く、馴染みのない方にはわかりにくい内容があるかもしれませんがサイトに体系的にまとめています。

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