Baseball Concrete Blog

主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

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WPAによるブルペン・マネジメント評価

Using WPA to grade bullpen management, part one

Using WPA to grade bullpen management, part two

Hardball Timesより、WPAをうまいこと応用して監督の投手起用のうまさを客観的に測定しよう、という試みです。

そのやり方で本当に監督のスキルを測れていると言えるのかとか、結果には運が大きく作用しているのではないかといった懸念はたしかに湧いてきます。

しかしそれを差し引いても発想が面白く、また主題をわかりやすく簡潔に(それでいて無味乾燥にはせず)伝える文章や、問題を無駄に複雑にしない数学的な操作の手際がいいです。セイバーメトリクス系統のエッセイとして学ばされます。

それにしても、こういう解析に触れると、WPA(勝利確率)という装置がこれほど高いポテンシャルを持つものかと驚きます。

というよりもむしろ、得点期待値やそれを近似したものとしてのOPSなどは全て、WPAの変数を削ぎ落とし単純化した応用例あるいは部分集合として理解すべきなのかもしれません。

WPAは非常に有効な形で野球というものを数量化(モデル化)しており、だからこそそこから自然な形で野球についての情報が自在に引き出せるのだろうと思います。

「勝負強さ」といった概念についても、それをどう数値化するかをゼロから考えればかなり錯綜するものと思われますが、FanGraphsで採用されているWPAを使った定義は非常にエレガントです。

日本でもWPAがブームになる時期がいつか来そうですね。

真理の追求

下記はセイバーメトリクス・リポート/マガジン編集者である秋山さんの一連のツイートです。興味深く読んだのでちょっと紹介します(推敲を経た原稿ではなくあくまで気軽なツイートかと思いますが、こんな形で引用してすみません>秋山さん)。


セイバーメトリクス・マガジン‏@sabermetricsmag
 ディレクションサイドの発言としては怠慢なのかもしれませんが、新しい価値観の浸透には、結局、日常的体験を通じた慣れ親しみが最も効果的だと思うことはあります。というか、逆に理詰めで定着していった価値観なんて、歴史上あったのだろうか。
https://twitter.com/sabermetricsmag/status/273625340834877440

セイバーメトリクス・マガジン‏@sabermetricsmag
 もちろん、単に新しい指標とそれを使った選手評価に慣れ親しんでもらえばいい、というのとは違うんでしょうが。
https://twitter.com/sabermetricsmag/status/273630066284572672

セイバーメトリクス・マガジン‏@sabermetricsmag
 浸透とは何か?ってことですよね。個人的には、セイバーメトリクスの浸透とは、すべての指標(勝敗数以外)の不完全さを認め、それでもなお事実に近づこうとする姿勢の浸透かと。解説者がWARで選手を評価しはじめたとしても、それが浸透かというと…。「おお!」とは思いますが。(文責:秋山)
https://twitter.com/sabermetricsmag/status/273686369254137856

セイバーメトリクス・マガジン‏@sabermetricsmag
 セイバーメトリクスの紹介で、枕に「本当の」「真の」という言葉がよく使われますが、スタート地点を誤っている気が。本当の実力を計測するという仕事の偉大さ(無謀さ)想像できたら出てこない。それに旧指標と新指標は対立するものではなく、事実に挑むステップのひとつで両方偉大。(文責:秋山)
https://twitter.com/sabermetricsmag/status/273687857930067969

セイバーメトリクス・マガジン‏@sabermetricsmag
 長ったらしいのですが「すべての指標(勝敗数以外)の不完全さを認め(前提に?)、それでもなお事実に近づこうとする姿勢」に、日常的な体験を通じ、慣れ親しんでもらえる機会がつくれればいいなという話になるんでしょうか。(文責:秋山)
https://twitter.com/sabermetricsmag/status/273689736080674816


ツイッターで軽めに思ったことを書こうと思ったのですが少し長くなりそうなのでこちらで。

言葉のニュアンスの話にもなるとは思うのですが、セイバリストが言う「真の」とかは、(それぞれの意識はともかく現実には)目標仮説みたいなものかもしれないですね。

「月に向かって打て」の「月」みたいに、本当にそれに届くかという問題ではなく、良いプレーをするための目標設定としてあるというか、そこで筋を考えるというか。

自分がいっぱしのセイバリストかは別にして予想をすると、おそらく、セイバリスト達は、実際の感覚として「真の」といった言葉をそれほど深い意味のあるものとして扱っていないんじゃないかと思います(ちなみに、自分は言うのあまり好きじゃないので言ってないと思います……多分)。

実際、自分で一生懸命データを打ちこみ指標を計算し実験や検証をしてみると、数字の説明力や予測力の乏しさに誰もが打ちのめされます。一定の試行錯誤を経た人間なら誰しもその非力さを知っているのではないかと思います。

その上でどんな顔をして「本当の」「真の」といった言葉を使うのかというと、それはあくまでも自分のやりたいことをとりあえず説明するリードで、詳しくは式(数字)を見てくれというところがあるのではないかと思うんですよね。実際にはそっちで会話しているというか。

示された指標や解析が本当に「本当の」「真の」といった言葉に相応しいか?とかそもそもの議論の成り立ちとしてその言葉が適切か?という人文的発想はすごく薄いような気がします。要は式と統計数値で会話している。まぁこの辺は傍から見てもそうでしょうしこれを認めたからと言って何が許されるわけでもないですが。

それで、たまたま最近読んだから引き合いに出す面もありますが、ネイト・シルバーの科学的予測に関する著作において、科学哲学などにも触れつついかに科学的予測が間違うかを書いておきながら、それでもネイト・シルバーが客観的真理というものの存在に信憑を置くことは大切だと強調していて印象的でした。それは、実体として本当に存在するかとか辿り着けるかということではなく、信憑として、道しるべあるいは思考装置としての問題なんじゃないかと思います。

そういう意味では「すべての指標の不完全さを認め、それでもなお事実に近づこうとする姿勢」のことをまさにセイバリストは「真の」という言葉を通じて言っているんじゃないかな、と。そこでの言葉遣いは不器用かもしれないですけど。

これが秋山さんの諸ツイートとセイバリストの言葉を繋げてより納得する材料になればいいですが、少なくともオタク側の感覚としてはそういう風に言葉を使っている、かもしれない、と思う、というお話でした。
まぁ、目指すところも手段も発想も人それぞれですが……。


セイバーメトリクス本質観としてのピタゴラス

Twitterでも書きましたが日経BPnetに掲載されている岡田さん(セイバーメトリクス・リポート編著者)の書かれた記事がオススメなので紹介しておきます。

メジャーリーグを変えたセイバーメトリクス入門(前編) (日経BP)

私が評するのもおこがましいですが、わかりやすいセイバーメトリクス概説でありながら本質を突いていて読みごたえがあります。

特に好きなのは、個人的な好みかもしれないですが、ピタゴラス勝率をドーンと提示して野球の構造をモデル化する観点を強調している点です。

色んな意味で奇遇ですが、最近読んだ小島寛之さんの『数学入門』でも数学史上最大の発見としてまず「ピタゴラスの定理」が提示されています。教科書的に高校数学を勉強していると「こんなもん何に使うんだ?」と思ってしまいますが、よくよく考えてみるとピタゴラスの定理が行っているような空間と数量を関係付けたりそこから算術を利用して新たな発見をしたりということは実は全く当たり前のことではなく、そのような発想を基礎付けたことそのものが偉大だというわけです。

さらに小島さんは別の著作『数学でつまずくのはなぜか』の中で心理学の「アフォーダンス」の概念にインスパイアされた面白い数学観を記述しています。
それは数学をとらえる本質観のひとつとして人間が主体的な能力として数学的な思考を持つというよりも世界の側に「数理的に記述できる」という性質があって人間がそれを(固有の仕方で)引き出しているのだという見方です。

私はもちろん数学やアフォーダンスの理論の深いところはわかりませんが、数学やセイバーメトリクスを単なる小手先の道具として見るのではなくその深い性質に信憑をおく見方には惹かれるところがあります。

凝り固まった野球観や野球についての全能感がまずあってそれを表面的に補強するために数字を使うだけでは数字の威力は全く活かせないでしょう。そうではなく野球を数理的に見るという新たな視点により本質を捉え直す構えが重要だと思うのです。野球の世界についても数理的に記述できるという性質があって、こちらがそれを上手く引き出してやることで有益な分析手法が生まれたり新たな発見が生まれたりするものではないかと思います。

話は紹介の記事に戻りますが、ビル・ジェイムズのピタゴラス勝率は勝利と得点・失点という野球のすごく重要なところについて「世界と数字を関連付けてモデル化する」という仕事をして見せた点で数学におけるピタゴラスの定理のように意義のあるもので、その考え方を(物事に向かう構えとして)受け入れることはセイバーメトリクスの深い部分を学ぶことに通じるように感じます。式は単なる数字ではなくて考え方です。

話としては少し大袈裟になってしまったかもしれないですが、なにより発想の転換なしにWHIPだのOPSだのと指標の計算式をなんとなく覚えるだけというのでは楽しくもないと思いますし。

クイズです

統一球に関連して、ふとセイバーメトリクスクイズ(?)を思いつきました。遊びで載せてみます。



【クイズ】
統一球で得点環境が歴史的な投高打低に傾いていることは周知の通りですが、ではこのような状況において、本塁打の(他の安打や四球に比べての)相対的な価値は上がっているのでしょうか?

ただしここでいう価値とは単に数が減っているから珍しいとか、飛ばないボールだから技術的に高度といった観点ではなく、あくまでも構造的に。例えば三振より四球のほうが得点の可能性が高まり勝利の可能性が高まるから価値がある、といった意味での価値で考えて下さい。




解答は追記で。
ついでに以前このブログに載せたネタも未見の方向けに。



【クイズ・オマケ】
チームの全打者の出塁率が99%の場合、1イニングの平均得点は何点になるでしょうか? 誤差1パーセント以内で期待値を算出して下さい。ただし、失策出塁やベース上のアウト、犠打、インターフェア等は考慮しないものとします。


続きを読む »

野球分析の羅針盤

なかなか更新する機会がなくて恐縮ですが、思い立ったので新しい知見じゃないですが日頃から強調したいことに関して。

それは得点期待値の重要性についてです。

得点期待値とはイニング内の局面をアウト・走者状況別に24に分け、各局面から平均的に期待される得点数を表したもの。
例えば無死一塁という局面が生じたら、0点に終わることもあれば1点とれることもあれば2点とれることもある……と実際の結果はさまざまなわけですが、平均すれば0.81点、といった具合です。

観察される野球のプレー(事象)は、さまざまなものがあります。ヒット、三振、盗塁、好守備、パスボール……。
これらそれぞれについて、どのプレーが「好き」かとか、何が「すごい」と思うかなどは、個々人の価値観です。
ただし、好き嫌いは別として、「勝利にどれだけの影響を持っているか」については、ある程度客観的に表すことができます。

ヒットであれ盗塁であれ守備のファインプレーであれ、それが起きたことの客観的な意味は打者が出塁したとか進塁したとかアウトが増えたとか、(得点期待値の定義上24に分割された)局面の変化で表現することができます。具体的には、無死無走者の局面がヒットで無死一塁の局面になったとかいうことです。

それぞれの局面について得点期待値が判明しているため、局面が変化したことの意味は得点期待値の変化(増減分)として把握でき、結果、その変化を生じさせた事象の得点に与える影響が明らかとなります。得点ポテンシャルをどれだけ高めたか、という意味ですね。

言い換えれば、この方法であらゆる事象を得点という尺度で統一的に評価できるということです。野球は得点の多いほうが勝つわけですから、得点という単位で評価を行うことは理に適っています。

同じシングルヒットでも無死無走者から出る場合もあれば満塁で出る場合もありそれぞれに得点期待値の変化は違いますが、全てのシングルヒットについて得点期待値の変化を測り平均すれば「シングルヒット一般の得点価値」を割り出すことができます。このようにして打撃成績の各項目に得点価値の重みを与えて打者成績を「どれだけ得点を増やしたか」で評価するのがピート・パーマーのBatting Runsであり、それに運用上の調整を加えたものが現在セイバーメトリクスの最終評価WARなどでも用いられているwOBAです。単打や二塁打などに「一般的な加重」を与えれば、たまたま打者が打席に入ったときに塁上に走者が多いか少ないかといった環境による影響を排除することができます。

私は、このように得点期待値を活用して事象を得点で評価するシステム(LWTSなどといいますが)は分析装置として大変に強力であり、人類史における羅針盤に相当する大発明だと思っています。
従ってそのありがたみを感じつつどんどん分析に活用すべきと思います。なんとなくの印象で「A打者とB打者のどちらがチームに貢献しているか」や「C選手の打撃とD選手の守備、どちらをとるべきか」といったことを議論するより、遥かに明快な見通しが得られます。
野球の議論においては各プレーの「重み」が極めて恣意的に語られることが多いため、得点期待値があらゆる分析の尺度として常に妥当するとまでは言わなくとも出発点となる基準として参照することは意味があると思います。

確かに、得点期待値で描写すべきでないことや、得点期待値で描写できないこともあります。例えば、そのプレーが起きたイニングの重要性など。しかしそれらは目的の違いであって、目的が異なる場合には異なるツールを用いればいいというだけの話です。そして、得点期待値で意味のある解析が行える場面は多いのです。

LWTSを使えばチームの総得点は高い精度で説明することができ、また最終的なチームの勝率は総得点・総失点で90%説明できることを付け加えておきます。

というわけで、得点期待値はエライよ、というお話でした。


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プロフィール

管理者:クロスケ

野球全般好きで、プロ野球をよく見ますが特定の球団のファンではありません。
セイバーメトリクス(野球の統計的分析)の話題が多く、馴染みのない方にはわかりにくい内容があるかもしれませんがサイトに体系的にまとめています。

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