Baseball Concrete Blog

主にプロ野球について、セイバーメトリクス的な考えを交えながら好きなことを書いています。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

続・盗塁阻止における捕手の肩の重要度

久々の更新。

前回の記事で、「盗塁阻止において捕手の肩の強さは思ったほど重要じゃない」という趣旨のMLBのリサーチを紹介しました。

それに関して、別の誰かの追試を見てみたいということを書いていたのですが、驚くことにNPBのデータで研究を行った結果が発表されていたのでここに紹介しておきたいと思います。こちらの記事自体2ヶ月ほど前のもので、既にご存じの方も多いかとは思いますが。


盗塁阻止を構成する要素に関する研究


詳しくはリンク先を見ていただくとしてここでは細かいことは説明しませんが結論としては

(1)捕手が使う時間よりも投手が使う時間のほうが盗塁阻止率との関連が強い。
(2)投手が使う時間ではリリースまでの速さが重要で、投球(放たれたボール)の速さはほとんど関係ない。

といったあたりについてはMLBと共通の様子でありつつ、捕手の絶対的な影響度の強さはMLBよりもかなり大きく出ているようです。
正直なところ、前回紹介したMLBの記事では捕手が消費した時間と盗塁阻止率との相関があまりにも低く(サンプルサイズの関係?)不自然だと感じていたので、感覚としてはNPBのリサーチのほうが納得しやすいと個人的には思っております。もちろん、どちらの出している数字が(絶対的に)正しいかという問題ではなく、数字は立体的に解釈する必要があるかと思います。

日米の比較に限らない話ですが、このように分析が広がっていくのを見るのは面白いですね。

盗塁阻止における捕手の肩の重要度

The Overrated Value of Catcher’s Throwing Arms (FanGraphs)

FanGraphsに出ていた分析記事。トピック自体わかりやすく、セイバーメトリクスによくある独特な計算(指標)が苦手という人でも問題なく入っていける面白いものだと思ったのでシェアしてみます。



テーマとして取り上げられているのは捕手の肩。一般的に盗塁阻止に関して大きな責任を負うのは捕手であるとされており、特に「盗塁阻止には捕手の肩の強さが決定的な要素である」という考え方が浸透しています。しかし著者はこの考えは本当だろうかと問いを立て、データを使って実態を探っています。

分析の内容としてはまず、対象を一塁から二塁への盗塁(二盗)に定めます。そして2011年と2012年にMLBで発生した7757の盗塁企図(二盗)から100個を無作為に抽出して標本を作り、その標本に含まれる盗塁について映像をフレーム単位で解析。「投手が投球動作をはじめてからボールが捕手のミットにおさまるまで(投手がかけた時間)」「捕手が捕球してから送球が二塁ベースに入った内野手のグラブにおさまるまで(捕手がかけた時間。元論文でいうpop time)」というふうにそれぞれの時間を記録します。

このようにして集めたデータを元に、それぞれの数字と盗塁阻止率がどう関係しているのかを分析していきます。まず捕手の捕球から送球の完了までの時間(pop time)と盗塁阻止率との相関係数は0.01であり、むしろほとんど関係がないという分析結果です。他方、投手が投球の動作に入ってから投球が捕手のミットにおさまるまでの時間と盗塁阻止率との相関係数は-0.88です。すなわち、投手が消費する時間が短いほど盗塁を阻止できる割合が上がるという強い負の相関関係があることがわかります。

さらに、投手が使っている時間はリリースまでの時間とリリースからの時間(すなわち球の速さ)に分けられます。著者はこのうちどちらがより重要なのかという点についても分析をしており、重要なのは投球動作をはじめてからリリースするまでの時間(元論文でいうmove time)だというはっきりした傾向が出ています。盗塁阻止率との相関は-0.90。球の速さと盗塁阻止率の相関は-0.04。

結論をまとめれば、はじめに立てた問いの「盗塁阻止には捕手の肩が決定的な要素であるという考えは正しいか」に対する答えは否であり、「盗塁阻止は投手がいかにリリースまでの時間を短くできるかでほとんど決まる」という結論となっています。

(著者は最後にreputation(評判)というものについても議論していますがごちゃごちゃしますし派生的なことなのでここでは割愛)





以下はブログ筆者がこの分析を読んだ感想。まず直球で面白い記事だと思いました。盗塁阻止率で捕手の守備を評価するというセイバーメトリクスでもやりがちな評価に一石を投じるものであると思います。もっとも、盗塁阻止には投手の影響のほうが大きいといったことの言及自体はJohn Dewan『The Fielding Bible Volume II』(ACTA Publications、2009)にもありますし実際の評価手法にも既に反映されていますから、発見自体が斬新であるというわけではありません。それでも一般的に興味を持った範囲でできる検証でわかりやすい形にまとめているという点でいい研究記事だと感じます。

セイバーメトリクス云々を別にしても、現に野球界は盗塁を考えるときに捕手の肩というのを重視しているはずで、その行動(思考)様式が果たして有効かという点を冷静に考えさせる結果だと思います。新人の捕手を紹介するときによく遠投何メートルとか、二塁送球が1.8秒だとか言いますよね。しかし盗塁阻止は当然に投手と捕手の共同作業であって、捕手の肩が強かったところで実状としてどれだけ勝利への効果があるかという問題があります。この研究とは別に盗塁というものが得点価値で見れば思ったほど重要でないというセイバーメトリクスの知見もあり、例えば捕手のドラフト指名を考えるときに肩の強さを重要な事項として見ることは総合的な勝ち負けの観点から果たして有効なのだろうかと疑問になります。

この研究のような「(物理的な部分を)実際に測ってみればいいじゃん」というのは観測に曖昧さが生まれるのもあってセイバーメトリクスの世界ではあまり行われません。しかし、もちろん測ってみて何か重要なことがわかるのであれば大事です。さらに、最近はいわゆるトラッキング系のデータが流行りで、高性能カメラ&専用ソフトウェアで物理的に選手やボールの動きを計測して評価してしまいましょうというのはトレンドです。捕手の守備に関してもトラッキングデータによるフレーミングの評価が行われるようになっていて、盗塁阻止に関しても同様にトラッキングデータを使って送球のタイムで評価するとか、盗塁阻止の結果を投手のクイックの速さで補正するとかいう道は十分に考えられます(当然、逆に、投手は盗塁阻止について多くの責任を負うのですから、WARの計算でその点を加味する必要があるでしょう)。その意味でも、このように具体的に切り込んでプレーのダイナミズムを明らかにしていくのは可能性を感じさせる研究です。

最後に、一応この分析には次のような留意点も挙げられるかと思います。

(1)手集計なので仕方がない部分ですが、一般的な結論として自信を持つにはサンプルサイズが少ないように思います。またどの時点をもって「投手が投球の動作を開始した」「捕手がボールを捕球した」と言えるかについては観測者によって偏り・ばらつきも出るかと思いますので、その点は注意が必要でしょう。別の誰かが独立に追試をした結果が得られれば理想的です。

(2)著者も述べている留意点として、投球が届いた位置や捕手の送球の位置などがどう絡んでくるかが明らかにされていません。また右投手・左投手の違いやイニングなどシチュエーションの問題までは今のところ踏み込まれておらず、とにかく「二盗」をひとまとまりとして捉えています。今後このような点に踏み込んで見てみるともう少しケースバイケースの結論が出るかもしれず、「捕手の肩はそんなに重要じゃない」と大雑把に言ってしまうのは馴染まなくなる可能性もあります。

セイバーメトリクスに入門していくためのサイトまとめ(英語)

ボストン大学がセイバーメトリクスの講座をオンラインで無料で提供するということがちょっとした話題になっています。
それを見て、なるほど英語でもセイバーメトリクスに入門していくのに役立つような情報をまとめておくと意味があるかもしれない、と思いました。
そんなことで、私の狭い見聞の範囲ですがセイバーメトリクスを知るのに有益なサイト(フリー)を並べてみました。





まずはSABRに掲載されている「セイバーメトリクス研究のガイド」。
セイバーメトリクスとは何かから重要文献、研究の仕方、使えるウェブサイト、データの探し方、成果の発表場所などあらゆることをまとめてくれており、「こういう良まとめがあるから見てね」でこのブログ記事自体終わりでいいんじゃないかというレベルです。

A Guide to Sabermetric Research



『メジャーリーグの数理科学』でお馴染みの統計学者ジム・アルバートによるセイバーメトリクス入門。
最近書かれたものではないため現在から見るとやや古めかしく見える内容ではありますが、アカデミックな人物による記述ということでおさえておくのもいいかと思います。
理学系でガッツリいきたい方はGoogle ScholarでJim Albertと検索して論文を探してみるのも良いかもしれません。

An Introduction to Sabermetrics



セイバーメトリクス系シンクタンクのBaseball Prospectusによる入門系のコラムシリーズ。
具体的なデータも交えながら一般的なセイバーメトリクスの分析を見る上で重要な前提になるところを説明してくれています。

Baseball Prospectus Basics



同様にセイバーメトリクス系の情報を発信するFanGraphsのサイトの用語解説集。
指標だけでなく一般的な原理についても解説があり、簡潔でありながらポイントをおさえた説明がいいバランスでちょっと用語を参照するには最適ですしただ読んでいくだけでも勉強になります。

FanGraphs Library



こちらもセイバーメトリクス系のサイトとしてはお馴染みのThe Hardball Times。
以下にリンクしているのはリファレンス用の記事まとめで、過去THTに掲載された良質な分析記事がトピックごとにまとめられています。
これらは入門というより実践編の分析ですが、入門を踏まえて実際に分析したものに触れるにはいいまとめです。

The Hardball Times Reference



セイバーメトリシャンの大御所(?)Tangotigerのサイト。
まとめられている分析もさることながら、ブログが超重要。コメント欄には著名な分析家たちが集います。

Tango on Baseball



こちらもセイバーメトリシャン、Patriotのサイト。
評価基準やパークファクター、得点推定式など基礎的で重要な事柄がまとめられています。ブログの方の内容も濃いです。

Buckeyes and Sabermetrics

Walk Like a Sabermetrician



応用編かもしれませんが、セイバーの論文集"By the Numbers"がPDFで読めます。こちらに関しても分析家Phil Birnbaumのブログも絶品です。

philbirnbaum.com








とりあえずざっと思いつくところを並べましたが、また気が付いたら追記します。






余談になりますが、近年はデータ分析への注目の高まりもあり、いわゆる伝統的なセイバーメトリクスのような亜流のゴリゴリ計算とアカデミックでまともな(?)統計学・データサイエンスが出会ったり対立したりという場面があるようです。

アカデミックな世界にいる研究者はしばしばネットの世界で広まっている分析を無視しますし、「査読論文でもない強引な計算のものを分析とか言われてもね」というところもあるようです。
一方それに対してネットで激論を交わしながら分析を進めているセイバーメトリシャンたちからは「手法の厳密さや論文の体裁にばっかりこだわってダサイ分析してるやつが何言ってんだ? アカデミアの連中が重要で有効な知見を発見したことが一度でもあったか? むしろオンラインでは分析が数々の知性のある人間の『査読』に晒されているんだよ」みたいな意見があったり(もっともこれら主張は前にどっかで話題になっていたものを思い出しつつ大袈裟に書きだしてみたものなので冗談半分にお受け取り下さい……。ただ、憤っている「ストリート」のセイバーメトリシャンの側も博士号持ちだったり、ただお互いの事情を知らずに感情的にやりあっているわけではありません)。

上記で紹介したのはほとんど「ストリート」系の技法的には単純で実益重視の分析ですが、近年MLBでは得られるデータの種類も量も凄まじいものになっており、思いつきで数字と数字を割り算するような分析よりも「素材を活かした」まともなデータ分析が求められるというか、少し潮流は変わりつつあるように思います。冒頭のオンライン講義もセイバーメトリクスの紹介だけでなくコンピュータを使ったデータサイエンスの授業でもあるということで、そのあたりも注目度の高さに関係があるのかもしれません。


【告知】『セイバーメトリクス・リポート3』

発売は月末でもう少し先ですが、セイバーメトリクスのアニュアル本である『セイバーメトリクス・リポート』が、今年も出ます。第三弾。

セイバーメトリクス・リポート3 (Amazon.co.jp)

今回も色々データが載っていたり、分析家によるコラムがあったりという内容です。昨年の秋に発売された『セイバーメトリクス・マガジン2』で既に2013年のWARが発表されていますが、そのアップデートバージョンも収録されています(本ブログで行ったような議論を反映)。

私は個人ネタとしては今回、「投手の成績を予測する簡単な方法」という記事を書きました。内容的には「カジュアルな数字遊び」と「分析的にちゃんと意味のあるデータ活用」のちょうど合間のような、簡単だけど使える指標の紹介をしています。

例えばWHIPは、計算が簡単かつ直観的で誰でもすぐに理解できる指標です。しかし残念ながら、何かを分析する際にWHIPが役に立つことは全然ないという点が散々指摘されており、わかりやすくて計算しやすかったところで意味ないよね、という話になってしまいます。

他方、成績予測などは(細かい精度の問題はともかく)情報としては誰もが求めるような性格のものですが、当方が行っているような比較的簡単な算出でさえ、おそらくやろうとする人は非常に少ないでしょう。端的に言って、面倒臭いです。

簡単に計算できるWHIPは役に立たない。役に立つ情報を求めると煩雑になる。しかし、WHIPのような簡単さで、成績予測みたいな性格の有用な情報が得られる指標があるとしたら……? と、そんな話がテーマになります。ゴリゴリの難しい感じではなく、軽く読んでいただけると思います。



ところで、当方が関わっているガチセイバーメトリクス系出版物も『セイバーメトリクス・リポート』が本作で3つめ、『セイバーメトリクス・マガジン』が既に2つと、数が多くなってきました。これまではスルーしてきたけど今からどれか買ってみようかとお考えの方も、中にはいらっしゃるかと思います。

基本的に、アメリカで出ているTHTとかのアニュアルもそうなのですが、別に1から順番に読まないといけないというものではありませんので今年の3ではじめて読むというのでも大丈夫です。

もちろんある程度、過去の研究を踏まえた発展などの流れはありますので、1から全て読んでいるほうが話がよくわかるということ自体は間違いありません。また、セイバーメトリクス系の日本語書籍の中ではおそらくもっともコアなシリーズなので、セイバーメトリクスについて全く何も知らない、というところから入ると戸惑う部分はあろうかと思います。

このあたり、もし予備知識を強化したいということでしたら例えば拙サイト道作さんのサイト、あるいは無料公開されたセイバーメトリクスの歴史をさらったコラムなんかを見ていただければ、特段別の書籍などを購入せずとも内容に馴染むための基本的なところは把握していただけるかと思います。

また、今回の『リポート3』には「リポートの理解を助けるセイバーメトリクスの基礎解説テキスト」があったり、例年通り用語解説があったりしますので、興味さえあればそれほど構える必要はないかと思います。


投手WARのフレームワーク


What is WAR for pitchers? (Tangotiger Blog)

TangotigerがWAR(投手)のフレームワークを一行の式で書き表しています。
こういうのは頭が整理されて面白いので、真似をしつつちょっと変えて、自分も投手WARの計算を式にしてみました。


WAR=(投球回/9)×(リプレイスメント失点率-失点率)/RPW×レバレッジ

※リプレイスメント失点率は、NPBでは平均失点率の1.3~1.4倍程度。
※RPWは通常10前後。
※レバレッジは先発投手は1.0、救援投手は役割により0.7~1.5程度。


WARはこんな感じの「フレームワーク」で、それ自体は普遍的です。そこから失点率をどういうふうに「守備から独立した」ものにするか(あるいはしないか)、リプレイスメントの水準をどう考えるかなどはいろいろな可能性があるというお話。
共通するフレームワークに基づく実践的形態の違いで、FanGraphsのWARとかBaseball ReferenceのWARとかが出てくるわけですね。

WARと言われると複雑そうでよくわからないと感じても、例えばRSAA(=(リーグ平均失点率-失点率)×(投球回/9))になじみがあれば、それをベースに考えることもできます。
比較基準をリーグ平均から控えのレベルに変えて、最後に10で割って単位を得点から勝利に変えれば(フレームワークとしては)WARになります。

最終的に「納得のいく総合評価」にするために細かいところを考えはじめればキリがありませんが、枠組みだけなら簡単ですし、上の式で本質はおさえられます。

«  | HOME |  »

プロフィール

管理者:クロスケ

野球全般好きで、プロ野球をよく見ますが特定の球団のファンではありません。
セイバーメトリクス(野球の統計的分析)の話題が多く、馴染みのない方にはわかりにくい内容があるかもしれませんがサイトに体系的にまとめています。

Baseball Concrete



RSSフィード

最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

月別アーカイブ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。